広がれ、お茶の輪 磯子区出身の増田貴史さん
よく晴れた土曜日の象の鼻パーク。自転車で颯爽と現れた1人の男性が、突然お茶を淹れ出した―。
磯子区出身の増田貴史さん(33)は毎週土曜日に、「遊牧茶会」と名づけた、お茶の無料試飲会を行っている。
「普段あまりお茶を飲まない若い人など、日本茶の良さを多くの人に知って欲しい」。そんな思いで昨年の11月から港の見える丘公園、山下公園、臨港パークなど観光地を中心に、自転車で回り始めた。荷台につんだ器を広げ、急須を傾ければ即席茶会が始まる。
実家は区内で3代続くお茶屋。幼い頃から身近にあった日本茶は「子ども心に和より洋の方が格好いいと思っていて、当時は好きになれなかった」。高校卒業後はアパレル業界に就職し、店舗管理から服のデザインまで第一線で活躍。24歳でオリジナルブランドを立ち上げたが事業がうまくいかず、26歳で業界を退いた。「軽い気持ちで実家の店を手伝おうとしたら、親父に修行して来いっていわれて」。1年半ほど、静岡にあるお茶の加工工場で働き、茶畑の手伝いをする日々。お茶の世界にどっぷり浸かるうちにのめり込んでいった。
自身が商品開発を手がけた「ミスター・チャーベスト」(写真)は複数の銘柄茶を独自の焙煎方法であわせたブレンド茶で、珈琲でいう「エスプレッソ」のような濃さが特徴。全て手作業で行う自家焙煎のため、量産はできない。この濃い味が一番引き立つようにと自作した、ぐい呑みサイズの器で提供するこだわりだ。「ただ飲むだけでなく、淹れるパフォーマンスや空間も楽しんで欲しい」といい、お茶版「路上ライブ」を目指す。
現在、遊牧茶会はツイッターなどを活用しながら情報を発信しているが、「外で急にお茶を淹れだすから変な人がいるなと遠巻きに見られてしまうことがほとんど」と苦笑。「家業を継ぐかは分からない。邪道なのも分かっているけれど、何よりやっている自分が一番楽しんでいる。お茶を中心に人の輪ができ、そこからコミュニケーションが広がれば」と笑顔をみせた。
増田さんは、オフィスや個人宅、屋外など、中区の自宅から自転車で行くことができる範囲であれば、無料でお茶を淹れに来てくれる「出張茶会」も開催。事前予約制、3月末まで毎週月曜日に行う。
詳細は、「ブログ チャーベスト」か増田園【電話】045・751・4604まで。
|
|
|
|
|