認知度と人材の不足が課題 ”保育ママ”の現状を追う
主に保育士の資格を持つ”保育ママ”と呼ばれる家庭保育福祉員が、自宅で少人数の乳幼児を預かる「家庭的保育事業」。横浜市では50年も前から独自に行われていたが、昨年児童福祉法に基づく制度として正式に加えられ、保育園の待機児童対策として新たに注目を集めている。市内では40人(中区2人・西区1人)が保育ママとして活躍しているが、慢性的な担い手不足や制度自体の認知度が低いなど課題も多い。
西区藤棚町にある3階建ての住居。「保育室」の看板はないが、西区唯一の家庭保育福祉員である内山康子さん(59)は、ここで12年前から働く母親たちをサポートしてきた(=写真)。
14帖ほどの部屋に絵本やおもちゃが並んだ保育室の中で、子どもたちは日中お絵かきや読みきかせを楽しんでいる。天気が良い日は散歩に出ることもあり、子どもたちの穏やかな表情と落ち着いた雰囲気が印象的だ。「子どもたちは”隣のおばちゃん家”に遊びに来ている感覚。少人数だから皆兄弟のように育っている」という。
離乳食やお弁当は各家庭から持参。連携する地元保育園で健康診断を受診できるほか、運動会などの行事も一緒に参加する。
家庭的保育事業で預かることができる子どもは、0歳〜2歳までの最大5人。補助員を雇い、常に2〜3人で保育にあたる。利用者のほとんどは口コミだ。内山さんは「歴史は長いのに、保育料や多子による割引など公立保育園と同じだということもあまり知られていない。保育形態の一つとしてもっとお母さんたちに知ってもらいたい」と話す。
横浜市の家庭的保育事業は、保育所の需要が増えた1960年にスタート。自宅で開設できるなど、比較的コストをかけずに保育の受け皿を増やすことが可能なため、待機児童対策として注目を集めるが、休日が取りにくい、家族の協力が不可欠などの理由による慢性的な担い手不足に加え、制度自体の認知度が低いなどの課題も多かった。
そのため横浜市では昨年から、従来の「1人の保育ママが居宅で保育する」という原則を緩和し、複数の保育ママが1カ所で共同保育する「共同型」やNPO法人など事業者の参入も認めている。また、保育所の入所案内で制度紹介をするなど、利用者への周知も含め制度拡大に乗り出しており、待機児童解消に期待が寄せられている。
還暦間近で”保育ママ”保育室新設に向け仲間募る
西区在住の大塚幸江さん(59)は還暦を間近に控えた今年、共同型の保育ママに名乗りをあげた。元々幼稚園で8年間働いていたが、結婚を機に退職。「保育ママは以前からやりたかったけれど一人だと負担が大きいと感じていた。共同型なら自宅以外でも開設できるため、仲間と一緒に地域の子育てを応援していきたいと思った」と話す。
現在大塚さんは、横浜駅徒歩圏内で保育室を開設すべく物件を探している最中で、一緒に活動をしてくれる仲間(保育ママ)を募集中だ。対象は50代の保育士・幼稚園教諭有資格者(連絡は【電話】090・3227・9473へ18時以降に)。「若い夫婦にとって実家の親に代わる存在に、シルバー世代にとっては生き生きと活躍できる場所になれば」と大塚さんは話している。
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