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南区 人物風土記

公開日:2022.09.15

活字鋳造職人として、2022年度の横浜マイスターに選ばれた
大松 初行さん
吉野町勤務 78歳

真面目に技と向き合う

 ○…卓越した技術が認められて「横浜マイスター」の称号を得た。この道55年、手の傷痕が長きにわたる職人人生を物語る。「磨き上げた技を評価してもらえたことを誇りに思う。活字鋳造という仕事が少しでも皆さんの目に触れると嬉しい」と微笑む。

 ○…長崎県平戸島出身。少年時代の夢は素潜り漁師で、海に囲まれたのどかな環境で育った。その一方、都会への憧れが強く、高校生のころに夏休みを利用し、名古屋の機織り工場でアルバイトを経験。「大きな夢を持った若者がたくさんいて、田舎にはない刺激があったね」と振り返る。「大松家を有名にしたい」という野心を抱き、18歳で上京。築地活字の前身である「築地活版」に就職した。

 ○…入社して約5年間は事務職や営業職などを経験したが、失敗の連続で自信を失いかけた。そんな時、上司から打診されたのが活字鋳造職人。「卒業した高校が普通科で、自分に務まるか」と不安を覚えたが、「成長のきっかけになれば」と挑戦を決めた。400℃の地金を型に流す工程などでやけどの連続だったが、「自分にはこの仕事だ」という手応えがあった。「ものづくりには、厳しさの中に楽しさがある。技術が形になった瞬間、言葉ではうまく表現できないような達成感が得られる」ときっぱり。

 ○…職人として駆け出しのころ、先輩に掛けられた「真面目に一生懸命、仕事に打ち込めよ」という言葉がモットー。「心が適当だと技も適当になる。一つ一つの工程に集中して取り組み、世間に認めてもらえるものを作って、初めて一人前と名乗れる。自分は、まだ完璧とは言えない」と謙虚で、78歳になった今でも向上心を持つ。さらなる飛躍を目指し、伝統文化を支え続ける。

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