琴線に触れる音色を

　○…13本の絃から多彩な音色を奏でる伝統和楽器の魅力を多世代に発信。永田東で箏教室を主宰するほか、市民活動や生涯学習支援を行うボランティア「街の先生」の顔を併せ持つ。「箏はほかの楽器と比べて演奏が難しいという印象をよく持たれるが、そんなことはない」と語り、気軽に始められる和楽器であることを呼び掛ける。

　○…静岡県富士宮市出身。９歳の時、「着物を着たい」という子ども心からピアノと両立する形で箏を始め、海外でも演奏経験がある外山香さんに師事。手が血豆だらけになったり、腱鞘炎を発症するほど真剣に取り組んだが、大学卒業後に就職のため辞めた。25歳で富士宮に箏教室を開講したが、本格的な活動はなかった。そんな中、背中を押したのが師匠の外山さん。当時あった、「ＮＨＫ邦楽技能者育成会」の受験を勧められて試験に合格すると、１年間、研鑽を積んだ。低音が特徴の十七絃を演奏できるようになったり、尺八奏者らとの合奏で「音楽の世界観が広がった」といい、箏への情熱を高めるきっかけになったとも。

　○…結婚して永田東に移住し、ここでも箏教室を開いたが、今でも月１回の頻度で富士宮に帰って教えている。出産以外の理由で教室を休講したのがコロナ禍。「感染拡大のピーク時に昔からの生徒さんが支えてくれた」と恩を感じる。古参の生徒に限らず、新しく入会した男性や外国人といった幅広い層に箏を受け入れてもらえることに喜びを感じるという。

　○…１児の母。「娘にはいまだにダメ出しをされる」と笑うが、さらなる上達を目指す原動力になるといい、「満点をつけられる演奏をした覚えがない」ときっぱり。ストイックに和の伝統と向き合い、「身近な音楽」を地域に届けていく。