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保土ケ谷区 文化

公開日:2026.02.27

横浜「注目の人」インタビュー
葉っぱ刺繍作家・ゆきえさん 横浜みなとみらいで初の個展開催 息子・リトさんとのコラボレーション作品も

  • 初インタビューとなったゆきえさん(右)と、息子のリトさん。親子揃って帽子がトレードマーク

    初インタビューとなったゆきえさん(右)と、息子のリトさん。親子揃って帽子がトレードマーク

  • 一番最初に作った「孔雀」

    一番最初に作った「孔雀」

  • おなじみの「あの餃子」も刺繍

    おなじみの「あの餃子」も刺繍

  • リト@葉っぱ切り絵さん(39)【プロフィール】1986年生まれ、保土ケ谷区在住。地元の小中校出身。大人になってからADHD(注意欠如・多動性発達障害)の診断を受け、偏った集中力やこだわりを生かして、2020年から独学で葉っぱ切り絵の制作をスタート。SNSにほぼ毎日投稿する作品が国内外で注目を集め、メディアで取り上げられる。2024年に福島市に個人美術館をオープン。2025年に「やなせたかし文化賞」大賞を受賞した。

    リト@葉っぱ切り絵さん(39)【プロフィール】1986年生まれ、保土ケ谷区在住。地元の小中校出身。大人になってからADHD(注意欠如・多動性発達障害)の診断を受け、偏った集中力やこだわりを生かして、2020年から独学で葉っぱ切り絵の制作をスタート。SNSにほぼ毎日投稿する作品が国内外で注目を集め、メディアで取り上げられる。2024年に福島市に個人美術館をオープン。2025年に「やなせたかし文化賞」大賞を受賞した。

  • ゆきえ@葉っぱ刺繍さん(67)【プロフィール】1958年生まれ、保土ケ谷区在住。東京都出身。専業主婦として過ごすなかで、心の不調を抱えた時期も。そんな母を支えたいと願った息子の勧めで、2019年よりInstagram投稿を始める。紙粘土作品や色鉛筆画などを経て、息子と同じ「葉っぱ」を舞台にした刺繍の世界へ。SNSでの発信と日々の積み重ねを通じ、現在は独自の表現スタイルを確立している。

    ゆきえ@葉っぱ刺繍さん(67)【プロフィール】1958年生まれ、保土ケ谷区在住。東京都出身。専業主婦として過ごすなかで、心の不調を抱えた時期も。そんな母を支えたいと願った息子の勧めで、2019年よりInstagram投稿を始める。紙粘土作品や色鉛筆画などを経て、息子と同じ「葉っぱ」を舞台にした刺繍の世界へ。SNSでの発信と日々の積み重ねを通じ、現在は独自の表現スタイルを確立している。

 横浜市保土ケ谷区在住で「葉っぱ刺繍」作家として活動するゆきえ@葉っぱ刺繍さん(67)の初の個展が3月1日(日)〜22日(日)、横浜・みなとみらいで開催される。

 「葉っぱ切り絵」で多くの人々を魅了するアーティスト・リト@葉っぱ切り絵さん(39)の母であり、自身もアーティストの一歩を踏み出すことになったゆきえさんだが、かつては心の不調を抱えていたことも。その状況を救ったのが、息子から手渡された一枚の葉っぱだった。本物の葉っぱに色とりどりの糸で命を吹き込む「葉っぱ刺繍」。独学で磨き上げたその技術と、作品に込められた想いとは――。アーティストとしてのゆきえさんと、母を支え続けてきたリトさんの2人に、地元・横浜で話を聞いた。(取材=2026年2月17日、会場のクロス・パティオ・グリーンスポットにて)

アーティストデビューは大好きな「みなとみらい」で

――以前からゆきえさんの葉っぱ刺繍もInstagramで話題になっていましたが、このタイミングというのは何かきっかけがあったのでしょうか。

リトさん(以下リト)「実は、このみなとみらいの会場で僕の作品展を継続して行っていて、2期目の展示が2月23日で終了。次の3期目の展示が始まるまでの空いている期間中は、別のアーティストさんの展示を行うことになっていたんです。そうしたら、運営会社の方が『せっかく誰かの展示をやるなら、ゆきえさんの作品展をやりませんか?』と声をかけてくださいました」

ゆきえさん(以下ゆきえ)「葉っぱ刺繍をインスタで投稿し始めて4年半以上が経ち、作品も350点近くたまっていました。インスタを見てくださっている方からも『作品を直に見てみたい』と声をいただくようになったので、開催することにしました」

――親子で同じ場所で個展を開くことについて、どう思われますか。

リト「もちろん僕はうれしいですが、『お客さんが来るのかな?』という心配はありますね。あとは『お客さんに喜んでもらえるかな』と。自分の個展の時も常にそう思っていますが、今回は母の展示なので、なおさらその心配は強いですね」

ゆきえ「そうなんです。私もうれしさ半分、不安が半分…というより、不安の方が大きくて。もう息子の足を引っ張ってしまうのではないかとヒヤヒヤしています」

「葉っぱ刺繍」で新たなジャンルを開拓

――どうして葉っぱに刺繍をやろうと思ったのでしょうか。

ゆきえ「最初は普通の布に刺繍をしてインスタに上げていました。やる以上は『いいね』が欲しいなと思っていたのですが、布の刺繍はレベルがすごい方たちが沢山いて、全然敵わないんです。既に葉っぱ切り絵作家として活動していた息子から、ある時、『葉っぱをあげるから、これに刺繍してみない?』と提案されたのがきっかけです。最初は葉っぱに刺繍なんてどうやってやればいいの?!と思っていました」

リト「布でこれだけ刺繍ができるんだったら葉っぱでもやれるでしょ、という軽い感じで提案しましたが、実際に出来上がったものを見て、すごいなと思いました」

ゆきえ「一番最初に作った作品は、この『孔雀(くじゃく)』=写真=ですね。葉っぱに針を入れたらピリってちぎれてしまうんじゃないかと思って、恐る恐る慎重に縫いました。完成にもかなり時間がかかってしまって…2時間くらいかかったかな。でもこれではインスタ投稿のペースが遅くなってしまう。何か補強できないかと考え、同じような色の布をボンドで貼ることにしました。ただ補強しているとはいえ、私の作品は糸をすごく重ねることが多いので、針を何回も刺していると葉っぱが割れてくることもあり、そこは慎重に作っています。万が一、ピリッとなったらボンドで補修(笑)」

愛あるダメ出しと主婦目線がキラリと光るオリジナル作品

――今回の個展では初公開含むオリジナル作品23点のほか、リトさんの作品をオマージュした作品も展示されます。制作中にはリトさんからのアドバイスもあったのでしょうか。

ゆきえ「息子が作る作品は、フォルムがすごく丁寧でかわいいんです。それを再現するのは本当に難しくて。でも『プロのアーティストとしてやっていて多くの方に見ていただいている。僕の作品を刺繍するなら絶対に妥協しないで』と、息子から何度もダメ出しをされました。『この部分を少しずらした方がいいよ』と言われた時は、内心、そんなに細かくなくても…と思ったりもしていたのですが(笑)、言われたとおりやってみたら、数ミリ違うだけで全然違うんですよね。これは素直に聞かなければと思いました。あと葉っぱ切り絵を見ていると、私は色がついていないのに色を感じるんです。『色が見えてくる』というか。だからオマージュ作品を作る時も、刺繍の色はすぐに決まりました」

――作品のテーマはどうやって考えているのでしょうか。

ゆきえ「息子の葉っぱ切り絵をオマージュしていることもあり、動物の作品は多いですね。かわいいですし。最近はオリジナルも増やしていて、(個展のチラシを見ながら)この写楽やパンケーキもオリジナルです。私は主婦なので家にあるものなど日常の身近なものから着想することも。例えば、みんながよく知っているあの冷凍餃子をつくってみよう、とか」

――あの餃子ですね(笑)。主婦の目線で作品のテーマを切り取るというのは、リトさんにはない視点ですね。

リト「切り絵だと色がつけられないので、特に食べ物系は難しいんですよ。例えばカレーライスを葉っぱの一色でカレーとご飯の違いを表現するのは難しいですが、刺繍なら、様々な色を使って表現ができます。また、僕は切り絵作品として一番良く見えるようデザインしているので、刺繍にした時に同じように見えるかというと、やはり少し違います。母は自分で絵が描ける人ではないので、既に世の中にあるものを再現するところからやってみたら、と話しました」

ゆきえ「あと難しいのが作品のタイトル付け。全くセンスがなくて…。息子は『作品はタイトルで決まる!』と何時間もかけて付けていますが、私は結局ありがちなタイトルをつけてしまって、またダメ出し(笑)。タイトル一つで皆さんに伝えるのは本当に難しいなとつくづく感じています」

アート制作とインスタが心の救いに

――Instagramを始めた2019年10月当時は、どのような心境だったのでしょうか。

ゆきえ「その頃はうつ病で心の不調を抱えていました。なかなか外に出られず、引きこもりがちで沈んでいる中、息子から『何か作ってみたら?』と言われて。何をしたらよいか分からないでいたら、100円ショップで紙粘土を買ってきてくれました。気が進まないなと思いながらコネコネしていたらその感触が面白く、だんだん楽しくなってきたんです。『せっかく作ったならインスタに載せてみたら?』と言われて、メールしか使えなかったのに、60歳からインスタを始めることになりました。実際投稿すると、知らない人から反応があって、うれしくなっちゃって(笑)。気持ちも舞い上がって、どんどん作品を作るようになりました。楽しくなってくると気持ちも開放的になってきて、外に出られるようになったんです。自分がどんどん変わっていくのが分かりました」

――創作活動やInstagramが外に出るきっかけにもなったんですね。

ゆきえ「そうなんです。それからは色鉛筆画やトイレットペーパーの芯で影絵など色々と作ってみたりしました。手芸は昔から好きで、レース編みや毛糸編み、子ども服を作ったり、アップリケを作ったり。元々作るのが好きだったんですね。だから刺繍も独学でできるかなと思って始めました。SNSも若い人だけのものかと思っていたけれど、案外この年齢で始めても楽しいですし、同年代のフォロワーさんも多いんですよ」

親子の絆、そして横浜への想い

――リトさんから見て、アーティストとしてのお母様の作品はどう感じますか?

リト「まだまだですね(笑)。厳しいですけど」

ゆきえ「厳しいんですよ(笑)」

リト「でも、親子で似ているなと思うのは、何か始めると終わるまでずっとやってしまうところですね。とにかく集中力がすごい。人の話も聞こえなくなるくらい没頭してしまうのは、一緒だなと思います。一つのことに長時間没頭し続けられるというのは、作品をつくる上で必要な技術だと思います」

――逆にお母さまから見て、現在のリトさんの活躍はどう思われていますか。リトさんはADHD(注意欠如・多動症)という発達障害を公表されていますが、子ども時代のエピソードなどもあれば教えてください。

ゆきえ「息子がまさかこんなに有名になるとは思いませんでしたが、素直にうれしいですよね。親の七光りなんて言いますけれど、私は子の七光り(笑)。息子とのことを誇りに思っています。でも子どもの頃は、何をやるにも遅くて…。忘れ物が多かったり、片付けができなかったり。長男だったのですが、次男の方が要領よかったり、私がてきぱき行動したい性格だったこともあり、振り返ってみると毎日イライラして怒ってばかりいたと思います。(当時はまだ発達障害という言葉が一般的でなかったこともあって)なんでこんなにできないんだろうと思うことが多く、結構きつく言ってしまうこともありました。でも子どもの頃から文字はすごくきっちり書く子で、その辺りも今の作品の緻密さにつながっているのかなと感じています。一切の妥協を許さず作品と向き合う姿勢など、アーティストの先輩として学ぶことが多いですね」

――最後に、横浜の方へメッセージをお願いします。

リト「横浜は海があって、山があって、都会っぽさもあって、すごくバランスがいい街。葉っぱ切り絵も葉っぱ刺繍も、作品の背景になっている空、その下にうつっている自然の風景がすごく大切なのですが、その写真は全部僕が自宅の裏山に登って撮影しています。だから、その空も山も自然も、全部『横浜の景色』。地元の方には、ぜひそのことを感じながら作品を楽しんでもらいたいですね」

ゆきえ「横浜に住んで30年。この会場があるみなとみらいは日頃から散歩コースとしてよく訪れていている思い入れのある場所。この会場の雰囲気も本当に大好きで。だからここで自分の作品を並べて初個展ができるのは本当にうれしいです。初めての個展でドキドキしていますが、ぜひご覧いただければと思います」

 ゆきえ@葉っぱ刺繍展は、2026年3月1日(日)〜3月22日(日)、横浜みなとみらい クロス・パティオ グリーンスポットで11時〜17時(土日祝〜18:00※最終入場終了30分前)、毎週火・水(祝日を除く)、中学生以上は600円(小学生300円)、未就学児無料。事前購入の電子チケットは500円(200円)。

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