白鵬女子高等学校陸上競技部を9度目の全国へ導いた 佐野 純さん 同部顧問・社会科教諭 54歳
止まない頂点への欲望
○…選手をあまりほめない。全国をかけ、今月行われた県高校駅伝大会で、選手たちはそれまでの最高タイムを20秒も上回る新記録を出した。メディアの取材には期待以上の成績だったと正直な感想を伝えた。でもその一言を選手に伝えることはない。厳しい態度には理由がある。「ここで満足してほしくない。本当はほめたいが、選手の将来のためにぐっと我慢する」。指導者には時に演技も必要なのだという。
○…大学卒業後、白鵬へ。着任当時、陸上部には長距離選手はまだいなかった。初めて出た県駅伝メンバーは、卓球部やバスケ部の寄せ集め。全国は夢のまた夢だった。そもそも女子を教えるのも最初は嫌だったという。「男子は丁寧に教えなくても勝手に練習するけど、女子は指導者に依存する傾向があるから」。しかし、ある選手との出会いが、考え方を変えた。「普通の子だったのに、指導したらインターハイまで行ってしまった。信頼関係があると女子は伸びることに気付き、やりがいを感じた」
○…陸上は中学生から。大学は箱根駅伝を目指し、名門の中央大学に進学するも、ケガや病気が続いた。コーチも放任主義で、思うように能力を伸ばせなかった。「あの時自分がしてもらいたかったことは、今に活きている」。指導につい没頭し、家族サービスは二の次になりがち。「娘も陸上をやっていたが、試合や運動会はほとんど見に行けなかった。指導ができるのは家族の理解あってこそ」。忙しい合間をぬって家では動植物の世話も。「定年退職したら選手ではなく、生き物を育てたい」と笑う。
○…「最初はここまでになるとは思わなかった。大きな大会に出れば出るほど欲が出る」。さらなる夢は、国際大会に通用する選手を輩出していくこと。「地域の人に評価され、かわいがってもらえるようにもっと上を目指したい」。さらなる頂点に向かって、選手と共に走り続ける。
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