鶴見区版 掲載号:2021年3月18日号 エリアトップへ

「土木事業者・吉田寅松」【20】 鶴見の歴史よもやま話 鶴見出身・東洋のレセップス!? 文 鶴見歴史の会 齋藤美枝 ※文中敬称略

掲載号:2021年3月18日号

  • LINE
  • hatena

勘兵衛が創建した常清寺

 延宝四年(一六七六)、勘兵衛は、吉田新田、現在の中区長者町附近に、身延山久遠寺一円院の住職を開基として、常清寺を創建した。

 常清寺の寺名は、父の法名「春清院栄玉日昌」と勘兵衛の法名「運千院常清日凉」に由来するという。

 常清寺は、大正十二年の関東大震災で全焼し、昭和十年に本堂を再建したが、昭和二十年の横浜大空襲で再び全焼。昭和二十七年に横浜市西区元久保町の久保山墓地に隣接する南区清水が丘に移転再建し、現在に至っている。

 久保山墓地は、西区元久保町に明治七年(一八七四)に、主に大聖寺と林光寺と常清寺が所有していた土地に造られた墓地で、横浜市営の墓地と寺院管理の墓地がある。総面積十二万六千平方メートル余、横浜スタジアム五つ分ほどの広大な墓地に一万四千基もの区画がある。

 墓地全体を見渡すような丘の上、市営墓地が開設した明治七年に開業した、久保山墓地で一番古い「かるべ茶屋」の前の吉田家の墓地に、初代勘兵衛はじめ歴代勘兵衛が眠っている。

 新田の開拓に成功した勘兵衛は、吉田新田に移り住んだ。江戸の材木店は長男の良太郎が継ぎ、幕府から旗本・御家人に支給される米の仲介を行う札差業を営み立会人としても隆盛を誇った。

 その後、番頭の「吉田屋」に店を譲り、子孫の多くも横浜に移り住み、江戸に残った一族は「吉田南家」として家業を受け継いだ。吉田屋の墓が南千住の真養寺にあった。

 江戸に残った吉田屋や吉田南家の縁につながる人々が、八丁堀や南千住などで木材・石材業を受け継ぎ、江戸の町が火災に見舞われるたびに、土木・建設工事などにかかわっていたと思われる。

石材・木材業修行

 北寺尾の鶴田家に生まれた才気煥発、気性豪胆、大志を抱いた吉田寅松は子供のころ、父治兵衛と一緒に横浜に出て木材の販売をしていた。

 横浜での材木販売に失敗した後、寅松は、札差業立会人も勤める吉田南家筋の材木店を頼って江戸に出たと思われる。

 寅松が薩摩屋敷の御用商人になったのは、文久元年(一八六一)二十四歳のときである。

 そこから類推すると、寅松が江戸に出たのは、安政二年(一八五五)の安政の大地震の前後、十七、八歳と思われる。

 江戸に残った吉田南家ゆかりの店で、寅松も江戸の町の復興事業にかかわり、木材や石材の取り扱い方や、土木工事の基礎知識や技術を体得し、商才をも磨き、二十四歳で薩摩屋敷に出入りできるほどの才覚を身に着けていったと思われる。

 慶応四年(一八六八)の戊辰戦争では西郷隆盛に従い、兵器弾薬や兵糧を請け負うまでになった度量と才覚を見込まれ、横浜の吉田新田の一つ目沼地の埋立事業を吉田本家筋から託された。

 この埋立事業にあたった寅松は、蓬莱町に土蔵が三棟もある大きな材木店を構え、一つ目沼地の埋立に要する木材や石材を供給していた。

 戊辰戦争時の兵糧米や明治新政府兵部省ご用達品や、一つ目埋立地に要する資材は、すべて吉田勘兵衛ゆかりの商店とのつながりがあったことで、成しえたと思われる。

 吉田寅松は、一つ目沼地の埋め立て事業が一段落した明治八年に自費をもって西寺尾村の道路を改築したとして、中島県令より銀杯を授与されている。

 『吉田寅松立身叢伝』には、その時期は不明であるが、寅松が「橘樹郡子安村相應寺へ畑若干を寄付」したとある。神奈川区七島町にある浄土宗相應寺を訪ねてみた。

 寅松の生家、鶴田家は、「北寺尾谷戸」で代々治兵衛を襲名していた旧家だった。文政十三年に八代目治兵衛は、相応寺の山門前の敷石などを寄進している。

 鶴田家は、相應寺に安政三年と慶応元年に金五円を永代回向料として寄付をしている。

 生麦の関口家当主が代々書き続けた「関口日記』の明治元年十一月に、北寺尾鶴田治兵衛から玄波石四十八本を求めたとある。

 寅松の生家である鶴田家は石材も扱っていた。慶応元年に相應寺に回向料を寄付したのは、商人として独り立ちできた寅松だったと思われる。

鶴見区版のコラム最新6

世界の信頼を勝ち得た技術

魅せます!鶴見のものづくり企業【7】

世界の信頼を勝ち得た技術

矢向 谷川油化興業(株) 

10月14日号

鶴見出身・東洋のレセップス!?

「土木事業者・吉田寅松」㉛ 鶴見の歴史よもやま話

鶴見出身・東洋のレセップス!?

文 鶴見歴史の会 齋藤美枝 ※文中敬称略

9月30日号

「華やかじゃない。縁の下の力持ち」

―社長列伝― vol.1

「華やかじゃない。縁の下の力持ち」

(株)クラフト代表 立松正美さん(69)

9月16日号

鶴見出身・東洋のレセップス!?

「土木事業者・吉田寅松」㉚ 鶴見の歴史よもやま話

鶴見出身・東洋のレセップス!?

文 鶴見歴史の会 齋藤美枝 ※文中敬称略

9月9日号

鶴見出身・東洋のレセップス!?

「土木事業者・吉田寅松」㉙ 鶴見の歴史よもやま話

鶴見出身・東洋のレセップス!?

文 鶴見歴史の会 齋藤美枝 ※文中敬称略

8月19日号

97年目のベンチャー企業

魅せます!鶴見のものづくり企業【6】

97年目のベンチャー企業

鶴見中央 旭平硝子加工(株) (株)ディー・アール・エス

8月19日号

意見広告・議会報告政治の村

あっとほーむデスク

  • 10月14日0:00更新

  • 9月16日0:00更新

  • あっとほーむデスク

    6月16日13:21更新

鶴見区版のあっとほーむデスク一覧へ

最近よく読まれている記事

コラム一覧へ

鶴見区版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2021年10月21日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook