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公開日:2026.03.19

東日本大震災発生15年
帰宅困難者ら救った夜
幸ケ谷小元教員に聞く

  • 校舎の前で当時の状況を振り返る足立さん

    校舎の前で当時の状況を振り返る足立さん

 東日本大震災の発生から3月11日で15年が経過した。地震当日、横浜市立幸ケ谷小学校では教職員たちが都内から歩いてきた帰宅困難者や高層マンションの地域住民など20人近くを一晩受け入れた。同校の教務主任だった足立真弓さん(62)に当時の状況を聞いた。

 国内観測史上最大の地震となった東日本大震災。神奈川区では県内最大となる震度5強を観測した。当時の本紙記事によると、区内で大規模な火災や停電はなかったが、歩道に亀裂などが見られた。電車が不通となり、帰宅困難者は神奈川公会堂や横浜市民防災センター、イオン東神奈川店(当時)、幸ケ谷小に避難。神奈川区役所は夜通し100人体制で対応に当たった。

校長不在の中、対応

 地震が発生した午後2時46分、幸ケ谷小では児童が下校している最中だった。「学校の前にある首都高の照明がしなるように揺れていて、初めて見る光景でした。校庭にもヒビが入っていました」と揺れの瞬間を振り返る。

 この日は関内で校長会が開かれており、学校長は不在。副校長や足立さんが中心となり対応に当たった。

 下校前の児童は校庭の中央に集合させ、保護者への引き渡しを実施。帰宅中の児童の安全確認を行い、保護者が不在だった兄弟1組を学校に戻し、迎えを待った。

避難者受け入れを決断

 児童の対応が落ち着いた午後6時ごろ、学校前の国道15号は帰路を目指し歩く人たちや、渋滞の車であふれかえった。

 そうした中で「東京からここまで歩いて来たのだけど、その先に帰るのが難しいので受け入れてもらえないか」という申し出が数人からあった。同じころ、余震も続く中でポートサイド地区周辺の高層マンションに住む高齢者らが「あまりにも揺れて怖いので、学校で泊まることは可能でしょうか」と学校に身を寄せた。

 学校自体は地域防災拠点として避難者を受け入れる役割を持っているが、その時点で拠点を運営する町内会役員や、区役所職員とは連絡がつかない状況だった。

 足立さんらは自分たちで受け入れを行うことを決断。当時多目的室だった現在の図書室を避難者に開放した。町内会の防災倉庫は鍵がなく使えなかったため、学校が管理する児童用の備蓄庫を使用。毛布やアルミ製の防寒シートを提供したほか、近くのコンビニエンスストアに走り、夕食や翌日の朝食を調達した。

 普段の校内訓練は児童の引き渡しや避難が中心で、外部からの避難者対応は予想外の経験だった。その時の様子を「割と冷静に対応することができた」といい、「うろたえるというよりも、とにかく学校を頼って来てくださった方には不安がない対応をしましょう」と教員同士で呼びかけた。

 校長も学校に到着し、宿泊者への対応もめどがついた段階で、徒歩で帰宅可能な教員は帰宅。足立さんも保土ケ谷区の自宅まで3時間近くかけて帰り、自宅と愛犬の様子を確認し、早朝には学校に戻った。

翌朝、ホワイトボードに

 昼までには避難していた約20人は全員帰途についた。滞在していた多目的室のホワイトボードには「本当にありがとうございました。温かいお声がけにとても安心しました」というお礼の言葉が書かれていた。足立さんはこれを見た瞬間「わずかでもお役に立つことができてよかった」と安堵したことをよく覚えているという。

 現在も月に1度、幸ケ谷共育倶楽部の読み聞かせボランティアとして同校を訪れる足立さん。震災翌年に幸ケ谷小を離れた後は、複数の学校で副校長を経験し退職。当時の経験から、防災倉庫の鍵の共有や、組織としての指示系統や情報収集体制の確立の重要性を感じたという。

 また、被災地の教員からも話を聞く中で「まずは自分の身を守ることで、より多くの人を助けられるようになる」という考えを強くした。

役割を分け混乱防ぐ

 市内では当時、鉄道会社が駅から近隣の小中学校へ行政との連携なしに誘導してしまうなどの混乱が一部で生じた。

 その経験を踏まえ、横浜市では現在、地域住民のための避難所である地域防災拠点とは別に「帰宅困難者一時滞在施設」を指定。区内では神奈川公会堂や専門学校、公衆浴場など18施設と協定を結んでいる。

 また、事業所には従業員の留め置きなど、帰宅困難者の発生抑制への協力を促している。

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