良い子を育てる良い川になってほしい――。生まれ育った多摩区を拠点に、幼少から親しむ多摩川の美化活動を40年以上続けてきた山崎充哲(みつあき)さん(61)=生田在住。「年を越せればいい方」という末期の膵臓(すいぞう)がんと闘いながら、「命ある限り、やるべきことを尽くす」と前を向く。
昨年にがんを宣告され、手術で一度は改善したが今年10月に再発。腹部の各所にがんが転移し、治療は困難と診断された。先月10日に退院し、妻の和代さん(59)、娘2人と自宅で過ごしながら、苦痛を和らげる緩和ケアを受ける道を選んだ。
「お世話になった人たちに会いたい」と病床で面会を開始。中野島幼稚園や生田小・中学校など母校をはじめ、活動の関係者ら200人以上が1カ月余りで訪れた。その合間で、長年傾注してきた小学校の出前授業もこなし、「子どもから親、さらにその先々へ広がっていくから」と、多摩川や水の生き物を題材にメッセージを届ける。
多摩川の生態系を外来種から守ろうと、飼育できなくなった観賞魚を引き取る「おさかなポスト」の活動は、稲田公園内の市さかなの家で2005年に開始。昨春の閉鎖以降は、自宅に併設する飼育管理事務所で継続してきた。余命宣告を受けながらも、事務所での南菅中の職場体験受け入れが来年1月、翌月には出前授業の予定がすでに入っている。
ポストをはじめ多摩川で毎夏行う親子向け自然観察教室などさまざまな活動は、移動水族館と充哲さんのマネジャーを担当する長女の愛柚香(あゆか)さん(27)が受け継ぎ、会社員の次女・穂垂(ほたる)さん(23)も携わる。物心ついたころから魚類調査など父の現場に同行し、卒園時の作文には「わかい(若い)しゅう(衆)になりたい」とつづった愛柚香さん。「現場はいつも楽しかった。父が育ててつくった道を、私が太く長くしていきたい」。充哲さんは「地方に田舎がない川崎の子どもたちには、多摩区や多摩川を心の故郷(ふるさと)にしてもらいたい」と願いを込めた。
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