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多摩区版 公開:2020年12月18日 エリアトップへ

川崎市立多摩病院 第3波 急増する負担 「医療現場の声、届けたい」

社会

公開:2020年12月18日

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インタビューに応じる長島病院長
インタビューに応じる長島病院長

 新型コロナウイルスの陽性患者を受け入れる川崎市立多摩病院(宿河原)では、感染拡大の「第3波」を受けて負担が増大している。本紙取材に対し、長島梧郎病院長は「医療現場の現状を皆さんに理解していただきたい。医療者の負担を軽減する方法や対策はいろいろある。地域の中でも考える機会を持ってもらえれば」と願いを込める。    (12月11日取材)

重症者、高齢患者の割合増

 指定管理者の聖マリアンナ医科大学(宮前区)が運営する同院は、重点医療機関として酸素吸入が必要な患者や、コロナ陽性で透析治療が必要な患者らに対応。「医師より看護師の負担感が強い。患者1人に対し、通常の約3倍の看護師が必要になる」と長島病院長は現状を打ち明ける。

 現在はコロナ対応のため、全376床の病床のうち約60床を閉鎖。コロナ専用の病床は集中治療室(ICU)2床を含め30床を確保している。

 一定の症状の重さを入院条件とする県の方針に伴い、重症者の割合が上昇。加えて、第3波以降は高齢者の患者が増えている。「入室のたびにフル装備の防護服に着替える必要がある。一般病棟に比べて対応が数分遅れるなど事故リスクが高まり、看護師の精神的不安につながりやすい」と長島病院長は指摘する。

 さらに、社会情勢も変化。第1波では「医療現場に対する皆さんの関心も高く、多くの寄付やメッセージが集まり、気持ちの面で本当に支えていただいた」と振り返る一方、「現在は医療者に対する差別や国の経済対策推進もあり、医療現場はどんどん厳しい状況になっている」と危惧する。「年末年始は人が動くと思うので、感染が広がれば1月以降は医療機関がさらに追い込まれる」との考えを示す。

院内感染対策で拡大防止

 同院では10月30日にクラスターが発生。救急の受け入れを2週間以上停止し、外来のみ稼働。集中治療室も閉鎖した。

 院内感染対策を担うICT委員長で、小児科医長の新谷亮さんは「職員が持ち込んで感染が広がってしまうことが懸念。コロナの難しい点は、せきや鼻水の症状が出る2日前から感染性があること」と指摘。症状が出た場合は業務を休み、コロナの検査を受ける。ただし検査は確実ではないので、2回受けて陰性であれば職場復帰するようルールが決められている。「軽症でも休まなければいけないのは大前提だが、どの職場でもギリギリの人員でやっている上、休んだときに自分の患者をどうするかなど課題は多い」と新谷さん。「病院の機能低下はもちろん、世間の評価にも影響する」とも話す。

 10月のクラスターでは、外科医1人の陽性が判明した時点で外科全員が2週間の自宅待機に。翌日以降、手術や検査の予約などを全てリスト化し、今後の治療等について予定を組み直すなどした。「現在の医療は医師1人が外来、検査、手術を担うので、1人がいなくなるとその診療が全てなくなる」と長島病院長。「体調管理が一番できているのが看護師。一方で、委託や派遣など外部の職員は管理責任が当院にない。そういうところの管理をしっかりやらないと」と念を押す。

ストレス心身共に看護師長の思い奔走する救急

 救急外来では、熱や疑わしい症状が少しでもあると、防護服着用で対応に追われる。通常2床の救急処置室は3床に拡張。仕切られた空間に看護師が1人ずつ入るだけでなく、外からサポートする看護師や同階の観察室で対応する看護師も必要だ。救急災害医療センターの看護部師長・野崎美穂さんは「本当にマンパワーが足りなくなっている。救急車の中で待機してもらう状況も発生している」と危惧する。

 集中治療室(ICU)では10床のうち2床がコロナ患者用だが、「自転車操業」状態。疑似症患者が多く、認知症の高齢者も増えているという。「マスク式の人工呼吸器は認知症の方が外してしまうことも。突然起き上がって歩き出そうとしたり、管を抜いてしまったり。できるだけ身体拘束をかけたくないが、どちらを優先するか常に看護師が悩んでいる」と野崎さんは語る。

 2月以降、救急車の入口に設置したコンテナで発熱者対応も継続。発熱者は1日20人ほど、救急搬送も含めると多いときは30人にのぼる。陽性率も上昇し、1日に陽性者が3人出ることも。「検査の精度は100%ではない。院内に入り込んでも何とか抑えないと」。救急から呼びかけて、全入院患者(成人)の検査体制も整えている。

専用病棟の苦悩

 同院5階の東病棟がコロナ専用病棟。全48床のうち28床をコロナ対応として確保。そのうち、夜勤の看護師4人で対応可能な16床を稼働する。「第1波、2波のときは多くても11、12床くらい。第3波にきて16床まで達することがあり、それ以上入らないことがあった」と語るのは同病棟の師長・菊地初実さん。今後は各部署から看護師を集め、20床まで広げる方針だ。一方、「他部署に人がいなくなるということ。コロナ病棟だけでなく周りもかなり厳しいと思う」ともこぼす。

 基礎疾患がある高齢者が増えたことで、看護師によるケアも不可欠に。医療用のN95マスクをつけ、防護服を着たまま2、3時間対応し続けることもある。「N95はかなり苦しいもので、酸欠で頭がぼーっとしたり、頭痛を訴えるスタッフも。防護服は風通しが悪くて暑く、みんなシャワーを浴びたように汗をかいて出てくる。体力的にも精神的にもきつい」と菊地さん。当初はいなかった透析患者も徐々に増え、11日時点で3人。リハビリのために1時間以上、防護服を着て対応するスタッフもいる。「看護師以外も負担を強いられている。(コロナで)発熱するだけではないということを、世の中の人に分かってほしい」

 専用病棟を出られても、一般病棟に移って入院を続ける患者も少なくない。一般病床がひっ迫し、新しい患者を受け入れられないことも危惧される。菊地さんは「できる限り高齢の方にうつらないように。家庭内で若い方がうつしてしまっていることもあるので、改めて考えてもらえたら」と思いを込める。

―・―・―・―・―・―

次号では同院の看護部長、医療安全管理室の看護師の声を届けます。

ICT委員長の新谷医長
ICT委員長の新谷医長
救急処置室(上)、コンテナ内に設けられたPCR検査場(左下)、専用病棟で防護服を身につける医師=11日
救急処置室(上)、コンテナ内に設けられたPCR検査場(左下)、専用病棟で防護服を身につける医師=11日
野崎さん
野崎さん
菊地さん
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