税優遇措置の期限を迎えることで宅地化が懸念される市街地の農地「生産緑地」。川崎市は6月、期限を延ばす「特定生産緑地」の指定を促進しようと、農家の個人情報を共有する協定をJAセレサ川崎と締結する。
生産緑地は、農業を30年継続することを条件に税金が減免される制度。市内の多くの生産緑地は2022年に期限を迎える。10年ごとに税優遇を延長する特定生産緑地の指定は所有者が自ら申し出る必要がある。
JAとの協定は、特定生産緑地の申請が7割にとどまる現状を受けて計画。市は、プライバシー保護の観点から開示していなかった未申請農家のリストを共有し、制度を推進する。JA側は、これまで組合員を中心にしていた訪問対象者を拡大し、残り260世帯の未申請者への全戸訪問を予定。JA担当者は「行政と連携して、申請したいのにできていない人を1人でも多くサポートしたい」と思いを語る。
食育や防災機能も
川崎市が行った市民アンケート(昨年度)によると、「将来に向けて農地を守る取り組み」を重要と考える市民は8割超。市内の農産物を使った料理コンテストを主催する清水まゆみさんは「都市農地をこれ以上減らさないでほしい。給食に提供される地場野菜の供給源にもなっているので、食育の面からも影響があるのでは」と話す。市の担当者は「防災空間や緑地空間など、市民の重要資産としての機能も果たしている。宅地化による社会的損失は大きい」と強調する。
点在する農地が宅地として売り出された場合に地価下落が懸念される、いわゆる「2022年問題」に対し、市は特定生産緑地の指定や農地の貸借を促進してきた。特定生産緑地については20回の説明会を実施したが、「対象者が認知症だったり、税制猶予を受けていて申請不要だと思い込んでいる人も」と、周知が難航していたという。
昨年1月時点の市内の生産緑地は1006世帯、約265ヘクタール。多摩区で果樹園を営み、申請を昨年済ませたという60代男性は、「後継者不足で将来的に継続できないという方や、一部を手放すという方もいる。特に果樹関係は、長期的に先を見据えて考えなければいけない」と、周囲の状況を語る。
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