▼昨年9月、中原区内に遺体安置所が開設された。タワーマンションなどでは、遺体を帰宅させることができないため、再開発が著しい中原区に開設されたと見られる。年々、死亡者が増加傾向にあることからも「川崎市には安置所のような施設が必要だ」という声もある。しかし、開設されたのが住宅街だったことや、周辺への説明がないまま工事が始まったことに対して不信感が募り、地域の住民らが反対運動を起こした。それを受けて川崎市は、遺体安置所などの施設を作る際の手順やルールを定めた「川崎市葬祭場等の設置等に関する要綱(案)」をまとめ、4月の施行をめざしている。
▼要綱案は葬祭場、遺体安置所などの設置や運営管理について事業者・市・住民の責務をまとめた。事業計画・維持管理計画の提出、近隣住民への説明会の開催、協議済証の交付などに言及し、事業者が施設を設置する場合の手続きを明確にした。しかし、気がかりなのは本案が要綱であり、法的拘束力がないということだ。これについて市の担当課は「安置所設置に関する国の法律がない以上、条例にしても強制力はない。要綱に従わない事業者がいても、相互理解に向けて真摯に取り組むしかない」と説明する。強制力はないが、要綱には指導勧告ができる旨を明記しており「抑止効果は十分に期待できる」と力を込める。
▼一方で、「火葬場での受入数を増やしていれば、そもそも遺体安置所はできなかったのでは」という指摘もある。市は、北部斎苑(高津区)と南部斎苑(川崎区)の2つの火葬場を運営し、1日に40体を上限に火葬している。市では「市内の死亡者数以上に火葬をしている」と強調する。しかし、年末年始に1週間ほど待たされたという市内の葬儀社もあり、火葬場の受け入れ態勢に不満の声も挙がる。
▼中原区の遺体安置所問題が起きてから半年での行政の対応は、スピーディで評価できる。しかし、再び住宅街に安置所が建たないというわけではない。現在、市ではパブリックコメントの意見を踏まえ、要綱案の調整を行っている。同じことが起きぬよう、火葬場の受け入れ態勢を見直しつつ、市民の不安を取り除くことができる実効性の高い要綱にまとめてほしい。
中原区版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|