連載95 大転換期を迎える川崎臨海部交通インフラ整備が発展の鍵 みらい川崎市議会議員団 こば りか子
川崎市臨海部は、昨今、大きく変化しています。殿町地区は、平成23年に国際戦略総合特区に指定以降、特定都市再生緊急整備地域、国家戦略特区にも指定され、健康・医療・福祉・環境等分野での課題解決に貢献する企業を支援し、日本の成長戦略の一翼を担う目的で整備されてきました。(詳細は市ホームページ「殿町国際戦略拠点キングスカイフロント」または「https://www.king-skyfront.jp/about/」をご覧ください)。
また、今年の3月には羽田連絡道路「多摩川スカイブリッジ」が開通し、羽田空港とのアクセスが劇的に向上しています。そのような中、川崎市の臨海部発展に重要な役割を果たし、本市の経済を支える主要企業だったJFEスチール(株)が2023年に高炉を休止することが決まりました。本市では、ディズニーランド4個分相当の222haの広大な土地の利活用が議論されています。しかし、その上で課題となっているのは臨海部一帯の交通インフラの脆弱さです。事実、関係組織を対象に実施した調査では、「研究開発の環境として重視すること」として、「交通利便性/通勤環境/時間距離/鉄道駅の徒歩圏内であること/日中の交通アクセスを重視する」との結果が示され、さらに「交通手段が良くなれば今後期待できる」とも示されています。
そのため、川崎駅を起点とする「川崎アプローチ線(注※)」の事業進捗の検討状況について確認したところ、既存鉄軌道の活用については沿線自治体で協議会を設置し、ルート沿線のまちづくりなどについて意見交換を行っている段階であり、今後に向けては、前回平成28年に実施された交通政策審議会の答申で課題とされた収支採算性の確保に向け、新たな需要創出に繋がる取組を協議していくとのことです。
収支採算性の確保へ、新たなアクセス軸を検討
次回の交通政策審議会は、2030年頃実施される予定ですが、本市にとって起爆剤となり得る事業展開が見込まれる地域における収支採算性の確保に向け、どのような未来予想図を描いているのか展望について質問したところ、南渡田地区や広大な土地利用を効果的に進めるためには、臨海部全体における交通ネットワークについて検討する必要があるとのこと。本市が進める計画案では、交通拠点の必要性を位置づけ、JFEスチール(株)跡地の土地利用方針では、基盤インフラの長期的視点としてJFEスチール(株)の所在する扇島と内陸部側の扇町を結ぶ鉄軌道を含めた新たなアクセス軸の検討の必要性について示し、本市の姿勢を明確にするということです。
さらに、臨海部における鉄軌道等の基盤整備効果については、地域内の交通利便性のみならず、羽田空港をはじめ、首都圏へのアクセスの飛躍的な向上が可能となり、川崎臨海部再編整備の推進に大きく寄与すると考えており、次回8年後に行われる国の交通政策審議会に向け、近隣自治体や関係者と協議、調整していくと決意を示しました。
本会議の質問では、臨海部エリアは、交通不便地域の最たるものであり、企業誘致を図るためには交通インフラ、特に鉄軌道の確保は欠くことのできない最重要課題です。8年後の交通政策審議会までに本市がどのようなビジョンを描き、企業に魅力を感じていただける交通インフラの構築も含め検討していくのか、重要な時期と考えます。「ニワトリと卵」の議論ではありませんが、JR東日本頼みの鉄軌道だけではなく、JFEスチール(株)跡地内にモノレールやトラムの導入、BRT専用道路の整備や、未来を見据えドローンタクシーの研究や専用レーンの構築などの他に、レジャー施設の誘致を含め、検討することを要望しました。
※「川崎アプローチ線構想」臨海部を走るJR南武線浜川崎支線(通称・南武支線)と東海道本線および川崎駅を短絡していた貨物線(1971年廃止)の跡地を旅客線として復活させる構想。平成28年に実施された国土交通省の交通政策審議会で検討され、東海道貨物支線の旅客化(品川〜浜川崎〜桜木町)とともに、「今後整備について検討すべき路線」と答申で位置づけられました。
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