薬剤師として働き、しんゆり交流空間リリオスで初めて漢方講座を開催した
入多裕さん
百合丘在住　48歳

傾聴力で人に寄り添う

　○…しんゆり交流空間リリオスで６月22日に行われた漢方講座の講師を初めて務めた。さまざまな生薬の組み合わせによって、心身の症状に対応できる漢方薬に興味を持ったのは高校時代。身近な植物が身体に良い薬になることにひかれ、漢方、薬学の道へ進むことを決めた。以降、調剤薬局で務めながら、知識、経験を積み重ねてきた。現在は時勢や気候変動による生薬の輸入量の不足を危惧。「国内でつくる質の高い漢方づくりに携わり、発信していきたい」と業界の未来を見つめ、具体的に取り組む。

　○…20年前にはさらなる高みを目指し、本場・上海へ留学を決める。「寮の近くにあった焼き飯や麺料理の屋台が恋しい」と、共に学んだ学生たちと過ごした日々を懐かしむ。修了後も学問への探求心は尽きず、心理学や哲学など、幅広い分野の知識を蓄えてきた。「自分の興味が仕事につながることに意味を感じる」と突き進む。

　○…休日は、まち歩きをしながら行う植物採集に時間を費やす。お気に入りの場所は、多種多様の草花が生育している多摩川の河川敷。公園で植物から採集した種をベランダに植えることも。「購入した種よりも野生の方が強く生き残るんです」と声を弾ませる。

　○…日々の生活で楽しいと感じるのは会話からその人の生き様を知るとき。７年前には市の職員と一緒に、高齢者の話をまとめて一冊の本に仕上げる「聞き書きボランティア」の活動に携わった。この経験は、薬剤師として大切にする「傾聴」の姿勢にもつながる。薬学の知識はもちろん、労働者の心の健康をサポートする産業カウンセラーの資格も取得するなど、「人に寄り添う」ことに重きをおく。培った学びを基に、患者との時間を大切にし続ける。