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公開日:2023.09.15
区内ALS患者
学生の体験学習に協力
地域医療の充実願い
区内白鳥に住むALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の高野元さんの自宅に9月9日、杏林大学(三鷹市)医学部の学生が訪れ、食事介助や交流などの体験学習を行った。同学習は、重度障害者支援を行うNPO法人が医療・福祉を学ぶ学生を対象に進めるプロジェクトの一環。高野さんは「医師を目指す人が地域医療を知ることは重要」と思いを語った。
同学習を企画したのは、重度障害者の介助者を増やす活動や支援を行うNPO法人「境を越えて」(江東区)。在宅医療・福祉の充実に貢献できる人材育成を目的に、医療・福祉を学ぶ全国の学生を対象にした「カリキュラム化プロジェクト」を3年前に開始した。障害者のもとで実際に体験を行うもので、今年は大学4校が必修科目や特別授業として導入している。
協力した高野元さん(58)は2014年に、運動神経が徐々に失われ、筋力の低下から発声や手指を動かすことができなくなる難病のALSと診断された。病気のことを知ってもらおうと療養生活の発信や学生実習の受け入れなど、社会活動を行っている。今回は以前から交流のあった同団体の依頼を受け、実施に至った。
9月9日には杏林大学医学部3年の中山佳奈さんが高野さんの自宅を訪れ、食事の介助や車いすでの外出補助など、高野さんの1日の生活をサポートした。
高野さんは「今までは看護、リハビリを学ぶ学生が多かったので医学部と聞き驚いた。医療は医師の指示がないと動けないので、医師を目指す人が地域医療を知ることは重要」と今回の活動について思いを語った。
意思疎通を大切に
高野さんは普段から透明な板に50音表が書かれた文字盤や、視線でキーボード操作を行う視線入力パソコンを意思疎通の手段として使用。文字盤を使って高野さんとコミュニケーションを重ねた中山さんは、長文での会話に苦戦しながらも「双方に対話の意思がないと、こちらの意図も伝えられない。医師になる前に知れてよかった」と学びを語った。高野さんはALSの問題として「コミュニケーションの難しさ」を挙げ、「医師で文字盤を読んでくれる人はいない。意思を聞いてくれるだけで信頼できる。一緒に学ぼうという気持ちを忘れずに」と中山さんにメッセージを送った。
同団体の本間里美副理事長はプログラムを通じて「地域で暮らすこと、それを支えることの両軸を自分事として捉えてほしい」と話し、「講師の育成、開催地域でのネットワークづくりに取り組み全国で波及させたい」と展望を語った。
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