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麻生区 人物風土記

公開日:2023.09.22

神経難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者で、学生の医療実習に協力している
高野 元さん
白鳥在住 58歳

心動くまま自分を生きる

 ○…運動神経が徐々に失われ、発声や手指を動かすことができなくなる国の指定難病・ALS。療養施設も増えてきたが、今なお在宅療養の患者も多い。今月、将来的な在宅医療の充実を目的とした医学部学生の体験学習の受け入れに協力した。「教科書通りにいかないことの存在も知り、いかに症例を積み重ねるかを考えてほしい」と、患者の望みに応えられる信頼関係が構築された地域医療の充実を願う。

 ○…大学院修了後はコンピューター利用技術の研究に打ち込んだ。管理や人材開発のスキルも磨いた後、独立し、コンサルティング業界に挑戦。ALSを発症したのはその矢先のことだった。趣味のテニスの途中、理由もなく転んだ。突然鼻声になり、坂道も下れなくなった。徐々に体に異変が起き、2014年に診断を受けた。「身体能力の低下よりも、社会との関係の希薄化に恐怖を覚えた」と振り返る。先は見えなかったが、同じ状況下でも明るく活動する人たちに出会い、前を向くことができた。

 ○…培ってきたビジネスの視点から危惧したのは福祉業界の連携の少なさ。ALS患者同士の出会い、情報共有の場として「川崎つながろ会」を立ち上げた。悩み相談、近況報告を行う定例会のほかに、福祉バスを利用した遠足にも出掛けるなど交流を深める。「ALS患者でも今の自分らしく、前向きに明るく生きることはできる」と心の声に従い、動き続ける。

 ○…活動の中で築いたつながりは幅広い世代に及ぶ。大学での講演や市内の小中学校での授業、総合学習への協力を惜しまず、輪は広がり続ける。「感性が柔らかく偏見がない子どものうちに、障害者でも対等な関係をつくれることを伝えたい」。未来を担う子どもたちに思いを託す。

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