県立弥栄高校に通う齋藤佳憲(よしのり)さん(1年)が9月23日の現地時間午前8時頃、アフリカ大陸の最高峰・キリマンジャロ(標高5895メートル)の登頂に成功した。齋藤さんは昨年にも一度挑戦していたが、悪天候にも見舞われ断念しており、2度目の挑戦で快挙を達成。世界7大陸の最高峰(通称・7サミット)制覇を目標に掲げる齋藤さんは、「次はオーストラリア大陸に挑戦する」と先を見据えている。
齋藤さんは、弥栄高校に通う16歳。幼い頃から母親とハイキングを楽しむなど、登山に親しんでいた。そんな中、中学3年時に読んだ登山家・野口健さんの自伝「落ちこぼれてエベレスト」に感銘を受け、何もかも中途半端だった自分を変えようと決意。野口さんと同じく、7サミット制覇をめざした。
その第一歩として昨年の9月、キリマンジャロ踏破に挑戦。7サミットの中では比較的登頂が容易とされるアフリカ大陸の最高峰に挑むも、準備不足が露呈したあげく季節外れの大雪にも見舞われた。ガイドから「登れないことはないが、もっと難しい山に挑戦するのであればその甘さが命取りになる」と諭され、4700メートル付近で登頂を断念。海外での初挑戦は、失敗に終わった。「トレーニング不足でなおかつ知識も無く、 登山家として甘かった。周りの人にサポートして頂いた分、とても悔しくて…」。当時中学生だった少年には、厳しすぎるほどの現実だった。
今冬には豪州挑戦へ7サミット全制覇めざす
自分への悔しさや情けなさを抱え帰国した齋藤さんは、高校進学と同時に、次の挑戦を見据えて準備を進めた。学校へは、トレーニングを兼ね最寄りの駅から徒歩30分かけて通学。丹沢など急こう配のある山に毎週出かけたほか、富士山に2回登頂した。
夏休みには、活動資金集めのため富山県の山小屋で3週間ほどアルバイト。登山客への料理の提供や、布団の片づけなど雑用をこなす業務は朝4時から夜8時まで続く。その間は満足な休憩もなく、常に立ちっぱなし。ホームシックになり、泣きながら皿洗いをすることもあったという。「本当に辛かったけど、この経験が自分を成長させてくれた」
野口氏、三浦氏が援助
夢への挑戦のため、学校生活の合間を縫ってトレーニングやアルバイトに励む齋藤さんの姿に、周囲も心を動かされる。野口さんや、80歳でエベレストを踏破した冒険家・三浦雄一郎さんに何度も手紙を送り続けると、両氏から返信があった。野口さんには登山ガイド会社を紹介され、三浦さんからは低酸素トレーニング室の提供を受けた。市内福祉グループの相模福祉村からはスポンサーとして支援を受けた。
こうして9月17日、齋藤さんはキリマンジャロに再挑戦するため、再びアフリカに発った。2日後には入山手続きを済ませて登山を開始。まずは身体を慣らすため、小屋に2泊。その後、マイナス14度の極寒の世界へ。酸素も日本の約48%と薄く、乾燥で鼻血は止まらずに意識は朦朧とした。それでも、歩みは止めない。その後4000メートル付近では、高山病を防ぐため眠らずに夜中の出発を待った。そして23日の現地時間午前8時頃、山頂へと到達。齋藤さんは、現地のガイドとともに日の丸を高々と掲げた。「昨年の失敗からトレーニングを重ねて、自信がついた。今のキリマンジャロは自分にとって苦しい山ではなかった」。努力は、結果となって表れた。
登山中、家族からは心配のメールがたくさん送られたが、自宅に戻り元気な姿を見せると、皆ほっとした表情を見せていたという。同級生からも「おめでとう」と祝福を受けた齋藤さんは、「秋休みの1週間は、ひたすら寝たいです」と頬を緩めた。
「中途半端で辞められない」
次なる目標は、オーストラリア大陸の最高峰・コジオスコ(標高2228メートル)。来年の2月頃挑戦予定で、今後は高校卒業までの4大陸登頂、最年少記録となる10代での7サミット制覇を目標に掲げる。「山が好きだから、嫌いだからで続けているわけではない。嫌いでも、中途半端で辞められない。自分の可能性を信じて必ず成し遂げたい」
齋藤さんは、登山時の記録や挑戦への歩みを短編ムービーにまとめている。「STORY оf 7 Summits」と題したその動画は観た人の心を打ち、応援のメッセージなども数多く寄せられている。現在は、今回の登頂までをストーリーにした第2弾の公開に向け制作中という。
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