相模原市は16日、昨年度における児童虐待などの相談状況を発表し、児童相談所が市に設置された2010年以来、虐待が疑われる児童の数は過去最多となった。全国的に児童虐待が増加傾向にある中、市では、窓口を一元化した「子育て支援センター」の設置などで「虐待の実態を把握しやすくなったことが要因の一つ」としている。
市が2017年度中に把握した虐待が疑われる児童の数は2034人で、前年度に比べ320人増加した。最も多い虐待は、食事を与えない、長時間放置などの育児放棄を意味する「ネグレクト」で、864件(前年度比261件増)に上り全体の42・5%を占めた。脅迫や無視など心理的外傷を与える言動を行う心理的虐待が760件(同38件増)で同37・4%、殴る、蹴るなどの身体的虐待が401件(同22件増)で同19・7%だった。
虐待が疑われる児童の男女比はほぼ等しく、年代別では就学前の乳幼児が最も高い934人、次いで小学生(678人)、中学生(295人)で、前年度と同様の傾向となっている。虐待者は実母が1344人で全体の66・1%を占め、実父(569人)と合わせると約94%に上った。
児童虐待の把握件数が過去最多となった要因について市こども家庭課は、妊娠期から産後、子育て・保育まで総合的な支援を行う「子育て支援センター」の機能を挙げる。昨年4月に各区に設置された同所では、窓口を一元化することで市民が相談しやすい環境を整え、加えて指導主事を配置して学校などとの連携が密になったことで家庭内での問題が把握しやすくなったとしている。
ネグレクト、面前DVが増
ネグレクトの増加について同課は、「本人には虐待意識が無い場合もあり、少子化における子育て経験の乏しさなどが、家庭での養育能力の低下にも関係しているのでは」と分析。一方、子どもの前で親が配偶者に暴力をふるう「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」も増加傾向にあり、安全確保のために市で小中学生などを一時保護するケースも増えているという。同課によると、昨年度一時保護された児童は276人(速報値)だった。
「児童家庭福祉」や「社会的養護」などを専門とする和泉短期大学児童福祉学科の櫻井奈津子教授は、「(虐待を減らすには)『大人が絶対』という意識を捨てなくてはいけない。大人が決めたことを子どもが守るという図式から抜け出せない状況が、子どもへの虐待を生んでいるように思う。一人の人間として子どもを尊重する意識が大切ではないか」としている。
同課の神藤次郎課長は「親同士が常に喧嘩している、子どもがいつも同じ服を着ているなど、気になることを見つけたら各区の子育て支援センターにご連絡ください」と呼びかけている。
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