さがみはら中央区・緑区 社会
公開日:2026.07.23
障害者サッカーチームの挑戦 市リーグ 15試合目で初白星
2年戦い、0勝10敗4分け――。2024年度から相模原市の社会人サッカーリーグ(3部)に参戦している知的障害者サッカーチーム「FCオルテンシアアクティブ」(以下、アクティブ/南区下溝)は今年4月、通算15試合目で待望の初勝利を挙げた。「障害者の枠」を出て戦う「挑戦」を続けようやくつかんだ1勝。結成10年を迎えた今、佐栁慶監督は「もっと私たちの活動を知ってもらいたい」と話す。
「配慮」は「対等」に108人が登録
アクティブは2016年4月、知的障害者がスポーツに親しむ機会をつくろうと結成された。現在は小学生から50代まで108人が登録し、障害の程度や技術に応じて6チームで活動している。一部のチームは県の障害者リーグにも所属。選手の約3分の1が市内在住者で、横浜市や小田原市などから通う人もいる。活動拠点は中央区淵野辺の國學院大學グラウンド。
「障害者の枠を出てチャレンジしたい」「サッカーを通じて障害を理解し、互いに尊重し合える社会になれば。相模原が誰もがスポーツを楽しめる街になってほしい」。24年4月、市リーグ参戦を表明した際、佐栁監督はそう語っていた。迎えた同年5月の初戦。選手たちはいきなりフィジカルやスピード、技術の差を痛感。中心選手の吉武大吾さんは「チーム全体がおじけづいてしまった」と振り返る。それでも「まずは1点取ること」を目標に掲げ、後半にゴールを奪取。試合は1―5で敗れたものの、「初戦で目標を達成できたことはうれしかった」と笑顔を見せる。
しかし、その後も苦戦は続いた。失点を重ねるとその後一気に崩れてしまうことも少なくなかった。佐栁監督は「2、3点取られるとメンタルが落ち込みやすい」と話す。それでも「いい意味で引きずらない。悪かったことは忘れて次へ向かえるのが彼らの強さ」と分析する。1年目は0勝4敗2分け、2年目は0勝6敗2分け。勝利は遠かった。
そして迎えた3年目。オフシーズンの練習を重ね、パスの強さや声掛け、動き出しなどが着実に向上した。4月19日、相模原北公園での初戦。「みんなが絶対に勝つという表情をしていた」と吉武さん。前半に2得点を奪うと、そのまま守り切り、前年敗れた相手から初白星をつかんだ。「とにかくほっとした」と佐栁監督は胸をなで下ろした。吉武さんも「応援してくれた人たちと一緒に喜べたことが何よりうれしかった」と笑顔を見せた。
複雑な思いも
「手帳(障害者手帳)を持っている選手たちなんです」。初年度、佐栁監督は試合前に相手チームへそう説明していた。「今思えば、審判も少し気を遣ってくれていたのかもしれません」と振り返る。実は初勝利のあと、複雑な思いがあったそう。喜びを隠しきれない選手の姿が相手に失礼ではないかと考えたのだ。しかしそれは杞憂だった。試合の様子をホームページで紹介してよいか尋ねると、相手から返ってきたのは「大いに使ってください」の一言だった。佐栁監督は「フラットになったと感じました」と語る。初年度にあった「配慮」はなくなり、今は互いに本気で戦う「対等」な相手として認め合える関係になったのかもしれない。「一つずつ勝利を積み重ね、上のカテゴリーを目指したい。そして、こういうチームがあることをもっと知ってもらえたら」
「実現」へのヒント 専門家の見解
同チームの勝利について「障害者福祉」が専門の相模女子大学狩野晴子准教授(人間心理学科)の見解「障害のある方のスポーツや余暇は、その重要性が指摘されながらも、就労など生活上の課題に比べて後回しにされがちでした。しかし近年は、余暇を通じた自己実現が人生を豊かにし、心の健康にもつながるものとして見直されています。市リーグ参戦から2年、その歩みは選手たちを大きく成長させ、自信を育むものだったのではないでしょうか。また、障害の有無を超え、一つのボールを追いかける中で対等な関係性を築いた経験は、共生社会を実現するための大切なヒントを社会に示してくれたように思います」
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