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さがみはら中央区・緑区 文化

公開日:2026.10.08

独演の俳優・井上弘久さん 相模原で実績重ね、11月にパリへ 縁の2人と対談

  • 相模原で実績重ね、パリへ (写真1)

  • 上から井上さん、雑賀さん、宮本さん

    上から井上さん、雑賀さん、宮本さん

 相模原を拠点に「椿の海の記」独演の実績を積んだ市内在住の俳優・井上弘久さん(73)が、11月のパリ公演(フランス語字幕)を決めた。この作品の成長には、市内で異彩を放つホール「メイプルホール」(中央区千代田)が関わっている。井上さんと同ホールをつないだ雑賀公一さん(73)、ホール代表の宮本康弘さん(49)の3者対談で、井上さんの相模原での歩みや作品の魅力を語ってもらった。

--「椿の海の記」は石牟礼道子氏が熊本県水俣市の美しい自然を描いた物語ですね

井 相模原市立図書館(中央区鹿沼台)に行った際に、新刊コーナーにあったのを偶然見つけたんです。椿の綺麗な装丁だったので開いてみたら、あっという間に引き込まれました。「ひょっとしてこの作品は、今の日本から消え失せようとしている貴重な世界を描いているのでは」と。

雑 井上さんとは自治会が同じで、地域の祭りで出会いました。「こんなすごい人が近所にいるんだ」と驚いたのを今でも覚えています。メイプルホールで芝居ができないか、顔見知りの宮本さんに相談したら二つ返事で「ぜひ応援したい」と言ってもらえました。それが2022年頃です。

宮 プロの役者さんかどうか、会ってフィーリングで分かるものなんですよね。井上さんと初めてお話した時、胸が熱くなるのを感じました。このホールではこれまで4回、公演をしていただきましたが、すごくフィットしていて。回を重ねるごとに観客が増え、全国に公演会場が増えていきました。

--メイプルホールは1990年にデザイナーズマンションの半地下でオープンしましたね

井 このホールは小さな床面積に対して天井が高いのが素敵。観客との距離は近く、演者と観客の想像力は豊かに広がる。

雑 36年の歴史の中で刻まれた傷やしみが残っていて、独特の気が流れているよね。

翻訳できない含みを体で

--パリの小劇場「エスパス ベルタン・ポワレ」から依頼があった時はどんな気持ちでしたか

井 すごくびっくりして、「やります」とすぐに言えませんでした。ただ、「椿の海の記」は世界文学とされるべき傑作なのですが、絶妙な「熊本言葉」を翻訳できないもどかしさをずっと感じていて。僕の芝居だったら、文字では伝わらないものを立体化して海外に伝えられるのではと。その絶好のチャンスだと捉え直し、パリに行くことを決めました。

雑 井上さんの芝居は本当に良質。「独演」という形式で、表情がころころ変わる面白さや、一人しかいないはずなのに何人もいるように感じる豊かな表現力が圧倒的。見る者の心を掴みます。それが相模原で見られるのが本当にうれしい。パリに行かれるのは同じ地域の者として喜ばしいことだし、そのきっかけとなったメイプルホールに良い橋渡しができたことは自慢です。

宮 10月17日(土)にはパリで披露する演目をメイプルホールで上演していただきます。ぜひ素晴らしい演技をご覧に、市民の皆さんにお越しいただき、井上さんをパリへ送り出したい。

井 「椿の海の記」の上演は、近代化の果てに行き詰まりかけている現代社会に「もう一つのこの世」を提示し続ける作業だと思っています。日本は、便利さを追求し続けるうちにものごとの良し悪しの基準が曖昧な国になってきていると感じる。貧しいけれども人と人が肌を接した時代を僕も感じ取りたいし、皆さんにも感じてほしい。

■パリ出発前のメイプルホールでの公演「井上弘久独演vol.5パリ公演記念 椿の海の記抄─もうひとつのこの世をもとめて─」は10月17日午後2時開演。入場料3千円。申し込み、問い合わせは同ホール【電話】042・751・5011へ。

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