ボクシングWBO世界フライ級王座決定戦が11月6日、東京・後楽園ホールで行われ、大島在住で同級3位の中谷潤人(22)=M.Tボクシングジム=が、同級1位のジーメル・マグラモ(フィリピン)に8回2分10秒、KO勝ちを収め、念願の世界チャンピオンに輝いた。
コロナ禍での国内最初の世界戦となった一戦は、度重なる延期を経て、ようやく実施された。日程が決まっては延びる難しい調整を強いられる中で中谷は、「現状を前向きに受け止め、自分を成長させる時間にしたい」と、怠ることなく練習に励んできた。
中学でボクシングを始めて以来、抱き続けてきた「世界チャンピオンになる」という思い。そして、プロデビュー前からキャリアの拠点とする相模原に「明るいニュースを届けたい」と公言して挑んだ戦いにも、リング上の中谷には気負った様子はなかった。
序盤から頭を下げ距離を詰めてくるマグラモに対し、中谷は引くことなく左右に動き相手をいなしながら、ジャブ、フック、アッパーと多彩なパンチを繰り出し終始冷静に対応。手数も勝り、試合を優勢に進めた。
そして、終盤にさしかかった8回。体を寄せてくるマグラモの顔面に強烈な左アッパーを炸裂させ、さらに左フックを浴びせると相手はたまらずダウン。なんとか立ち上がるも続行不可能と判断したレフェリーが試合を止めた。その瞬間、会場は拍手の渦に包まれた。
これでプロデビューから21戦全勝(16KO)。リング上で行われたインタビューで中谷は、コロナ禍での試合を実現させてくれた関係者や応援し続けてくれたファンに向けてお辞儀し「この試合に向けてたくさんの方々に協力いただいた。その思いを拳に乗せて今日リングに上がらせてもらった」と感謝の言葉を述べた。また、地元の三重県から一家で上京し、自身を支えてきた家族に向け「ボクシングを始めてからずっとサポートしてくれてありがとうございます」と再び頭を下げた。
試合については「1ラウンド目でいいパンチが入り自分の中で組み立てやすくなった」と振り返り、今後の展望を「統一戦、防衛戦、なんでもクリアできるようこれからも日々チャンピオンロードを歩んでいきたい」と力強く述べた。王者像に関しては「茨の道と言われてきたが、4回戦から地道にこうして王者になれた。4回戦の選手にも手本になれたかなと思う。さらにビッグファイトをして目標にしてもらえるような選手になっていきたい」と語った。
偉業支えた家族祝福の声
会場で息子の雄姿を見届けた父親の中谷澄人さんは、「頑張った。いつも1ラウンドはロースタートなので1回を終わり、いけるなと思った。まずはおめでとうと言いたい。ゆっくり休んでほしい」と労った。母親の府見子さんは、「ほっとした。減量中は食べられなかった好きなオムライスとか甘い物を食べさせてあげたい」と話した。弟の龍人さんは、「かっこいい、尊敬できる兄と改めて思わせてくれた。前日に電話で、後悔ないよう、勝って無事にリングを降りられたらいいね、と話したが、その通りになった」と笑顔を見せた。
「試合中は拝んでいた」と胸をなでおろしたのは、三重県四日市市から駆け付けた祖父の中谷篤さん。「男4人の孫の中で一番おとなしかったのに、わからないもの。普段の姿と、秘めたものは違う。小さい頃からの目標が叶って、ご苦労さんと伝えたい」と話し、祖母の直美さんは「ずっと心臓がどきどきしていた。よく頑張ってくれた」と安堵した。中谷が所属するM.Tジムの村野健オーナーは、「決して楽ではない道のりを、よくここまで練習してきた。ジムとしてみんなでサポートできたし、本人も感謝してくれている。おめでとう、ありがとう」と言葉を贈った。
王座獲得の2日後、中谷は取材に「プロになる前から活動させていただいている相模原にこのような報告ができてうれしい」と喜びのコメント。重圧はなかったのかとの問いには「相模原の方々に応援していただき、信じていただけることが原動力となっていたので、プレッシャーというよりも活力になった」と応じ、「明るいニュースをお届けできるようチャンピオンロードを突き進み、皆様から愛される世界王者になる。これからも応援よろしくお願いいたします」と話した。
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