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町田 コラム町田市立博物館より

公開日:2015.04.02

町田市立博物館より【7】
一足早く"涼"を楽しむ
学芸員 齊藤晴子

  • 浮世絵を思わせるような色合いも魅力のひとつ「氷コップ」 日本 大正時代〜昭和初期高さ7.8cmほか 個人蔵

 夏には少し早いですが、今回は「かき氷入れ」のお話です。現在、町田市立博物館で開催中の展覧会では、大正〜昭和頃の氷コップ(かき氷入れ)が50点ほど、ずらりと並んでいます。今では屋台などで紙製やプラスチック製のカップで供されることの多いかき氷ですが、大正時代頃のかき氷入れは一味違って、とてもお洒落です。ガラス製で、技法は宙吹き・型吹き・プレスなどさまざまありますが、今回ここでご紹介するのは型吹きの一種「あぶり出し」という技法を使った氷コップです。



あぶり出し



 「あぶり出し」と聞くと、ミカンなどの果物の汁で紙に書いた絵や字を、火であぶって浮かび上がらせる技法がまず頭に浮かびますよね。ガラスの技法の「あぶり出し」も、火であぶることで透明なガラス地に乳白色の文様を浮かび上がらせるものです。そもそも乳白色のガラスというのは、ガラス中の結晶や微粒子が光を乱反射して私たちの目に白く見えているので、ガラスの「あぶり出し」を行う際にも、ガラス中で光を乱反射する乳濁剤を混ぜたガラス原料が用いられます。この特殊なガラス原料を熱して熔かし、凹凸のついた金属型に吹き入れて膨らませます。このとき膨らませすぎず、ガラスが型に触れる部分と触れない部分を作るのが製作上のポイントです。このあと炉に戻してあぶるとあら不思議、型に触れた部分が乳白色の文様となって浮かび上がります。「あぶり出し」技法については、展覧会会場内のパネルで詳しく解説してありますので、ご興味のある方はぜひ博物館に足をお運びください。



さまざまな文様



 氷コップにはさまざまな文様があり、ヴァリエーションが豊富で見ていて飽きません。ちなみに写真左の作品は「籠目文(かごめもん)」、右は「卍(まんじ)つなぎ文(もん)」と呼ばれる文様です。他にも、水玉文や七宝つなぎ文、波千鳥文などさまざまな文様のものがあります。氷コップはコレクターの間でも人気が非常に高く、高価なものでは1点でかき氷が数百杯から千杯くらい食べられるような値段のものもあるようです。



 かき氷の季節に一歩先んじて、博物館で涼しげなガラスの器に囲まれてみませんか。

 

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