町田 コラム
公開日:2025.08.07
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の156
均衡と祈り
八百万の神、日本は神様が大勢いらっしゃる多神教で、地球上の全ての物、全ての事象に神様が宿り、全ての動植物がバランスを保っていることが、神様が静かで落ち着いた状態であるとされる。この穏やかな状態を保持していただくために社(やしろ)に祀り手を合わせ、「どうか穏やかに鎮まっていてください」と祈ることが基本であって、個人的な欲望は控えめにお願いするべきだ。
人間はその根本である地球環境をいじめ過ぎてしまい、自分たちの利便性ばかり追求して、動植物が生きやすい環境をないがしろにしてきた。神道にはキリスト教や仏教には「教え」と呼ばれる教義・経典の類がないが、日本の道徳生活そのものが「神道」だとしている。
当社の御祭神菅原道真公が遺された言葉「心だに 真の道にかないなば 祈らずとても神や守らん」は、日々道徳的に真面目に生活していれば、祈らなくても神様は守ってくださる、という意味。しかし、自分の私利私欲を捨てて道徳的に日々を送りつつ、「どうかお鎮まっていてください」と祈ることだけは忘れてはならない。
当社境内には十種類余りの梅があり、年明けから順次開花してきた。そして3月も半ばになれば、最も遅咲きの「楊貴妃」が少し波打つ八重の花弁を開いて、梅花の終わりを告げる。そしていよいよソメイヨシノが日本中を盛り上げる。梅は種類によって開花期がずれるから、花見は桜ほど派手ではないが、梅に縁が深い当社御祭神が和やかに過ごされるように植えられているのだから、長く楽しめるのも効果ありかと。つまり人が境内の梅を楽しむのは神様へのお供え物のお下がりをいただいているようなもの。新芽の息吹に、花の美しさに、楽しみ、和み、励まされ、しかも植物は光合成で酸素を作り、野菜果物は命もつないでくれる。守らなければ世界中の神様が荒ぶる。
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