町田版 掲載号:2018年1月18日号 エリアトップへ

宮司の徒然 其の36 町田天満宮 宮司 池田泉

掲載号:2018年1月18日号

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「警鐘」

 先日、持病の腰痛(ぎっくり腰)のリハビリを兼ねてやぶの散策に出掛けた。20歳代で強烈なのをやって以来、2年に1度くらいのペースで地雷が爆発する。仕事柄腰を使うので治療していても治りは遅い。今回も久しぶりにやったが、何故か翌日から地鎮祭などが続くスケジュールで止む無く腰を酷使し、案の定長引いてしまっている。思い切り休むことのできない中堅神社の悲哀だ。

 さて腰はともかく、久しぶりのやぶ歩きは雑キノコを物色して楽しめた。毎年アカモミタケ(写真右)が発生する某寺院の弁天堂裏では例年になくたくさん採れた。朱鷺色とオレンジの中間色で、舌触りはややボソボソ感があるがチチタケほどではなく、良い旨味のある優れた食菌だ。

 先週、何気なく見ていたバラエティー番組で「静岡のタケノコ王と山梨のキノコ名人が幻のキノコを探す」という企画を放送していた。キノコが大好物の私には有り難い企画だったが、番組終盤で明らかにされた幻のキノコの名は「コウタケ」(写真左、山渓カラー名鑑「日本のきのこ」より)だった。その瞬間、治りかけの腰がくだけた。というのも、若かりし頃、知人の伝手で初めて長野県へ夏松茸を採りに出かけた折、急峻なマツタケ山に登る途中でたくさん収穫したのがコウタケだったし、長野の地元民はそれほど珍しいキノコとは位置付けていなかったからだ。同じ大きさでも秋の松茸より実が詰まっていて倍近く重い夏松茸の方が遥かに上位にあるようだった。その番組では収穫したコウタケを炊き込みご飯などにして堪能して終わるという流れで、ついにコウタケの性質について語られることはなかった。これは危うい。

 コウタケは椎茸より大きく肉厚で良い味が出る優れた食菌だが、生はもちろん、半生状態でも中毒を起こす。だから、東北などの産地では何回も水にさらし、一度煮てから乾燥品にして販売している。そこまで念入りにするのはおそらく過去の中毒事例に基づくものだろう。さて、私が採取したコウタケは家族で美味しくいただいた。オーブンでしっかり焼いておろし醤油で堪能。しかし採ってきた私に一番分厚いのをくれた。実に美味しかった。これが事故のもと。熱がしっかり入っていなかった。就寝後、異常な発汗と悪寒、嘔吐、揚げ句の果てに部屋の景色が、まるで黄色いサングラスをかけたように見え、光が方々から飛び交ったり、つまり毒成分が視神経や脳にもきて幻覚を見せてくれたのだ。見せてくれたと言えるのは30年以上経過した今だから言えることで、その晩は「このまま死ぬのか」と覚悟したほどだった。翌朝、体力と身体の水分は奪われて抜け殻のようになっていたが、幸い1日欠勤しただけで事なきを得た。中毒の経験は3回しているが、これは2番目に辛かった。

 情報が過剰に溢れている今、テレビ、ラジオ、ネットの影響力は大きい。旬なタレントも各メディアがこぞって取り上げるとブレイクする。世界の事件もメディアの取り上げ方次第で注目度が変わる。例えば、フィリピンのミンダナオ島に侵攻したISとフィリピン軍が交戦していることは、ネット以外では流されていない、というかネットによって漏れている。本来ならばアジア圏にISが近づいているという大事件ではないかと思うが、おそらくアメリカやフィリピンからブレーキが掛けられていて日本政府がメディアと穏便に結託しているのではと想像する。悪い意味で解釈されてしまっている「忖度」というやつかもしれない。しかし、情報は流し過ぎると混乱も招くことは分かっているから、そのあたりの調整は日本ならではなのだろうか。

 とりあえずコウタケについては、番組内でちゃんと危険性を名人が語るなどしてほしかった。にわかマニアが採りに行って私のように半生で食べたら大事故だ。良し悪し両面で、それほどにメディアの影響力が強いのだから。
 

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