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町田 コラム

公開日:2025.12.11

町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 杉と熊

杉と熊

 この秋は熊で大騒ぎだ。殊に本州では、熊は人が山中に分け入って出会う動物だったが、今は人の生活圏に出没する事態になっている。原因は様々だが、先ずドングリ類の不作らしいが、かつても不作の年は定期的にあったはずなのに何故今年?と疑問をもつ。原因をたどると負の連鎖が見えてくる。狩猟者が高齢化で減少し、これまでの頭数調整が困難になっている。これは熊だけではなく鹿や猪も同じで、頭数が爆発的に増えている鹿や猪が木の実や草を食べれば、当然熊の餌も当然不足する。数年前、狩猟者に対して一人あたりの鹿の捕獲頭数が2頭に増やされたことは耳に新しい。鹿や猪は熊より危険性は低いものの、畑の作物を食べたり、桜の樹皮を食べて枯らしてしまう厄介者だからだ。こういった積み重ねが人の生活を守ってきたことは余り知られていない。木材需要が爆上がりした高度成長期に、自然林は剝がされてスギやヒノキが植林され一時期景気は良かったが、外材におされて需要がなくなると放置林となって荒れ放題。植林を推奨した国は責任をとって再びブナやコナラなどのドングリ類の植林を支援すべき。つまり動物の食べ物を減らしたのは経済成長という名のもとの無計画な自然破壊で、杉花粉から始まり、鹿や猪が山や畑を荒らし、ついには熊。実は一連のしっぺ返し。

 現地で生活する人たちの気も知らず、人の生活圏が脅かされないよう何十年も熊や鹿、猪を駆除して調整してきた歴史も知らず、かわいそうとか残酷だとか、捕獲して逃がすべきだとか、SNSや電話で現地の役所に訴える人たちも爆発的に増加。こっちも頭数制限しなくては行政の仕事が滞ってしまう。良い手だてはないものか。

 紅葉狩りやキャンプは熊が出没しない行楽地が人気になっているという。こんな時には無理して行かなくても秋を満喫できる。私はようやく色づいた百日紅やマンサク、梅、ツワブキの花などで十分楽しんでいるし、近くの雑木林を散策すれば、秋はたくさん落ちているはず。

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