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町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の74

掲載号:2021年4月15日号

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 今年も蕗の薹(ふきのとう)が次々に顔を出した。蕗は知る人ぞ知る日本の固有種。古代より全ての部位が利用されてきた。これもまた春の使者の代表格で、残雪に鮮やかな黄緑色のフキノトウが出てくるさまは、北国の長い冬の終わりを知らせる可愛らしい蕾、そんな写真がよく見られるが、あいにくというか幸いというか、この辺りではほとんど雪が降らず、降ったら降ったで交通機関は大混乱の大騒ぎ。慣れない雪かきで腰痛に筋肉痛。それでも、フキノトウの芽吹きは何とも可愛らしい。そして美味しそう。

 年に一度、質素でぜいたくな食事をする。庭で採ったばかりのフキノトウを一つ、生のままみじん切りにして小皿へ。切ると空気に触れてすぐに茶色っぽくなるが、しょうゆを数滴垂らして混ぜるから気にならない。これに熱いご飯と赤だしみそ汁があれば完璧。しょうゆと和えたフキノトウをご飯に乗せていただくと、程よい苦みと春の香りが口中に広がる。質素だがぜいたくな味。

 以前、クイズ番組にフキノトウが出題されていた。それは逆回しのクイズで、すっかりフキが目指す完成形になった姿から、よく知る食べ頃な形に戻していく画像が流れて、いったい何かを答える早押しクイズ。私は最初の完成形で即答。番組回答者は誰もが芽吹き始めた形まで戻ったところでやっと分かった様子。これは普段野山を散歩している人や、もちろん農業にたずさわっている人なら当たり前のように分かるが、意外にも知らないんだと少し驚いた。写真は右の2枚は食べ頃、中央が花の見頃、左はキク科らしく種と綿毛をつけている。よくよく考えてみれば、アスパラガスは土からニョキッと出たのを食べてしまうから、生産業者や家庭菜園で育てたことのある人以外は、アスパラガスの目指す似ても似つかない最終の形を見たことがないかもしれない。当然だが人間は食料として最適な時、俗に言う「旬」に収穫して美味しくいただいてきた歴史があり、四季のある日本はなおさらだ。

 キューピーの売り文句に「人の体は食べたものでできている」とある。当たり前だが真理だ。人間は最も多種の動植物を食す生き物だ。ならばもっと大切に無駄なく摂取してくればよかったのに、先進国ほどフードロスは甚だしい。野菜売り場に常に並んでいるニンジンやダイコンも旬はある。農業の弛まぬ研究と保存技術の進歩などにより一年中食べることができるが、本来はそうではなかった。我々はいつの間にか旬の美味しさを忘れかけているのではないだろうか。

 そう考えると、何としてもオリンピック・パラリンピックを開催しようとしているのは果たしてどうなのだろう。中止にしても保険が効かないからか、政治とお金と利害関係の匂いがする。コロナが収まっていない中、国民、いや世界中が美味しくいただけるタイミングとしては「旬」ではない気がする。
 

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