町田版 掲載号:2021年7月29日号 エリアトップへ

町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の83

掲載号:2021年7月29日号

  • LINE
  • hatena

松ぼっくりの悲哀

 以前、ツキミソウやユウゲショウの種=写真右=の落とし方について記した。これらは本体も全て枯れたとしても、種房は雨でぬれると花のように開き、さらに雨で下にこぼれ落ちる。水分によって種には粘性ができて虫や鳥や動物にくっつくことで移動する。種房は乾くと閉じて残りの種を包んで次の雨を待つ。たとえ種がなくなってしまっても繰り返して、やがて自らも朽ちていく。

 松ぼっくり(松毬、松傘)は反対に、乾くと開いて鱗片(りんぺん)の間にある羽根付きの種を落とす。親木の根元に落ちたのでは、いずれ親とけんかになるから、羽根で風を受けてなるべく遠くへ飛ばしてもらう。そのため、乾いていることが必要条件だから、松ぼっくりはぬれると鱗片を堅く閉じ、乾くとまた開く。たとえ地上に落下しても開閉を繰り返せるのは、鱗片の外側と内側の繊維の密度が違うためか、外側だけ水分による伸縮が大きい繊維質を持っているのではないだろうか。もちろん、親木から落下して堅く乾いた松ぼっくりは、たくさんの種を挟んだまま死んでいる。でも開閉を繰り返す機能を持ったまま。死してもなお種の散布のために開いたり閉じたり、まるで生きているかのように。

 それに比べたら人間は、たいてい灰になって何の役にも立たなくなる。せめて土葬なら地球の養分になれるのに。しかし、人間は生前に残せるものがある。偉大な研究成果を残したり、多くの人たちのリーダーとなって努力し、地域や人々を幸せにしたことなども当然そうだが、人間性が好かれて見習う人や目標としてくれる人がいたり、家族を守り、良い思い出づくりをしたり、死しても様々に残せるものはある。ただし、お金は上手に残さないと大変なことになりがち。また、人類には文字がある。多くのことを後世に残すことができる。

 松ぼっくりが狂おしいほどひたむきに、同族のため、子々孫々のために、枯れても開閉をくりかえすのを見ていると、涙ぐましくて切なささえ感じてしまうが、そういえば今まさに、死してもなお開かれようとしているものがあった。赤木ファイル。梅雨が明ける頃に開いて追い風が吹けば真実の種を飛ばすのか。
 

町田版のコラム最新6

宮司の徒然 其の87町田天満宮 宮司 池田泉

菊の節句

高台寺蒔絵 中棗

菊の節句

協力:泰巖歴史美術館【電話】042-726-1177

9月9日号

宮司の徒然 其の86町田天満宮 宮司 池田泉

宮司の徒然 其の85町田天満宮 宮司 池田泉

蚊にはご用心

織田有楽斎書状 (年未詳)7月11日

蚊にはご用心

協力:泰巖歴史美術館【電話】042-726-1177

8月12日号

宮司の徒然 其の84

町田天満宮 宮司 池田泉

宮司の徒然 其の84

8月12日号

あっとほーむデスク

  • 9月9日0:00更新

  • 9月2日0:00更新

  • 8月19日0:00更新

町田版のあっとほーむデスク一覧へ

最近よく読まれている記事

コラム一覧へ

町田版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2021年9月23日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook