町田版 掲載号:2021年8月12日号 エリアトップへ

町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の84

掲載号:2021年8月12日号

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仲間廻し

 庭に突然車輪梅(シャリンバイ)があった。手入れが行き届いてない雑草に紛れて育ち、気づいたときには腰の高さくらいになっていた。庭や境内にシャリンバイはないから、おそらく黒い果実を食べた鳥の爆弾が、わが家の庭に投下されたのだろう。塀際の片隅だから踏まれることもなく、まさしく強運を持ち合わせているのだから、もうしばらくは居候として留めておこう。シャリンバイは本来、海岸近くの岩場などの明るい場所を好み、強い潮風に耐えるためか高木にはならない。バラ科だがトゲはなく、枝の付き方が車輪のスポークに似ていることから車輪梅となったらしい。奄美大島では市の花として大切にされていて、それもそのはず、あの大島紬に欠かせない木だからだ。幹と枝から抽出したタンニンが染料となり、大島紬の特色である泥染めの技法により、シャリンバイのタンニンと泥の鉄分が化学反応を起こすことで、あの味わい深い黒色が生まれる。だが、そんなシャリンバイもわが家で居候すれば染物に使われる心配はない。

 大島紬は何人もの技術者のバトンで完成する。糸を紡ぐ者、シャリンバイのタンニンを定着させる者、泥染めをする者、糸の一本ずつに模様の目印をつける者、そして目印に従って機織りをする者。もう40年余り前、大学時代に奄美大島に一週間遊びに行ったときのこと。夜になると、海辺の村のどこそこで機織りの音が聞こえた。パタン、パタンとゆっくり。一本ずつに付けられた目印を合わせながら、ゆっくりと。全ての工程を経て1年以上かかることもあるというから、紬が高価な理由は納得だ。ただし、伝統工芸だからこそ後継者問題もあって、技術の保存と継承に苦慮していることも事実だ。

 同様に町工場の技術も一人で完結しない製品がほとんどだ。パーツ毎に専門の職人が熟練の技を発揮し、それぞれ別の工場で作られた素材やパーツが集まって素晴らしいものになる。東京下町ではこれを「仲間廻し」と呼び、信頼と連携の絆は強い。ところが、コロナ禍で経済が足踏みすれば作る仕事は減る。どこか一箇所が廃業しても仲間廻しは成立しなくなる。長年の信頼や絆は、部品を交換するような簡単なことでは済まない。

 日本人は物作りの技術はもちろん、連携や結集力も長けている民族だ。地域づくりも同じこと。そもそも連携や結集ありきの民族だからこそ、核家族化は本来不得手でぎこちないことになってしまっている。口癖のように発信する穴だらけの安心安全ではなく、穏やかな関係の仲間廻しで、安心安全な暮らしやすい町にしたいものだ。
 

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