八王子芸者衆の紗愛(さな)(18)さんが11月20日、お座敷デビューを果たした。芸者衆を支える団体「八王子黒塀に親しむ会」(福山眞吾会長)の宴で、祝いの舞「宝船」を披露した。会場の八王子エルシィ(八日町)に集まった会員からは大きな拍手が送られた。
「真面目で意思の強い子です。とても立派に踊れていました」。1年間、見守り続けた「置屋恵美寿家」(南町)の女将、あやめさんは目を細めた。
紗愛さんはテレビの時代劇の影響などで小学生の頃から着物が好きになり、将来は「着物を纏う仕事」に就こうと考えていた。いつからか芸者を志すようになり昨年秋、インターネットで八王子花柳界のことを知った。YouTubeで恵美寿家に出合うと、早速メールで応募をした。「日野市に住んでいましたが、その存在を知りませんでした。近くにこのような花街があり、とても新鮮でした」
昨年11月から「お仕込みさん」として働き始めた。未成年であったことからお酒扱うことができず、料亭では料理を運ぶ業務などを任された。「ちょうど年末だったのでお姉さん方がとても忙しくされていた印象があります」。朝から昼へと稽古が続き、夜はお座敷。その合間をぬって芸者衆全体の練習があるという多忙な姿を見る中で、不安もあったがそれよりも「惹かれる思い」の方が強くなっていったそう。
入門以来、踊り、鳴り物、お茶とそれぞれの稽古に励んできた。どれも初めてだったが「褒められることもあり、その時はとても嬉しい」と喜ぶ。一方、若者ならではの苦労話もある。踊りの稽古で流す音楽は「カセットテープ」を使うことが多い。まだ10代の紗愛さんにとってカセットは初めて見るものだった。「先輩方から『(曲を)戻して』と言われてもうまくできず。A面、B面も何のことかわかりませんでした」と笑って振り返る。
お座敷デビューにより「半玉(はんぎょく)」となった。今後、「襟替え」をし「一本の芸妓」となることをめざす。「あやめお母さんのように、その場にいるだけで場が盛り上がる芸者さんになりたい」。見守る先輩は「物覚えが早い。とてもリズム感がある」と評価する。あやめさんは「日々の積み重ねが大事になっていくと思います。お客様に喜んでいただけるような芸者衆に育ってくれると良いですね」とエールを送る。当面の目標は来年5月にある「八王子をどり」の舞台に立つことだ。
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