170年の伝統 発展見届けたい

　○…１７０年続く伝統芸能を次世代につなぐ。国重要無形民俗文化財の指定については「守りに入るのでなく未来志向、常に前向きでありたい」と笑みを浮かべる。車人形が海外で広がり、世界中で車人形を取り入れたカルチャーが増えればと願う。「そのルーツが八王子にある」。そんな将来を夢にみる。

　○…生まれたときから生活の中に人形、三味線がある環境だった。ただ、人形には触らせてもらえず許されたのは人形遣いが使う車。友達と乗って遊んだ。「今思うと、あのときから訓練されていたんですね」。学業を終えると４代目である父親の手伝いをするように。その一方、継ぐことに対し「重圧」を感じていた。転機になったのは受付年齢ギリギリのタイミングで文楽の研修生になったこと。「これを逃したら一生後悔する」と飛び込んでみた。「２年間、全てが勉強になりました。今の自分があるのはこの研修のおかげ」

　○…映画も古典が好みで「ローマの休日」がフェイバリット。「そこには相手を思いやる芝居がありますね」。落語は「円朝さんや志ん朝さん」ら往年の噺家がお気に入り。海外公演をまわる中で何度も世界グルメに舌鼓を打ってきており一番の思い出はポルトガルのかたつむり。「２００匹くらいが皿に…。食べてみたらビールに合って」と絶賛する。

　○…創始者である江戸時代の初代、多摩地区に普及をさせた２代目、戦火の中、守り続けた３代目、そして演技力を向上させた４代目。自らは海外に活路を見出しこれまで40カ国ほどで公演を開いた。今、頭の中の８割は「継承」のこと。「多くの人に技術を伝え、それを発展させるのを見届けたい」。襲名し四半世紀が過ぎた。バトンの渡し方を模索する。