八王子 人物風土記
公開日:2023.10.19
「八王子芸術祭」の一環で、10年計画で地元産楽器の制作をスタートさせた
永井 朋生さん
八王子市在住 48歳
八王子の音、届けたい
○…「10年という長さには驚きましたが、頭にすぐアイデアが浮かんできて。結局ほとんど即答しました」。八王子芸術祭の主催団体から依頼を受けたときのことを振り返る。2年ごとに市内5地域を巡って行われる同祭の、通年企画としての抜擢。各地域で見つけた素材で楽器をつくるという未知の旅に、「光栄に思うし、今からワクワクしている」と期待に胸を膨らませる。
○…静岡県生まれ。小学生の頃に八王子に。東京芸術大学大学院では、溶かした金属を型に流し込んで器や道具を作る「鋳金」に精を出した。父はデザイナー、兄弟は「鍛金」「彫金」をそれぞれ生業とする、「ものづくり一家」だったという。「なければ作れ、という家庭でしたね」。その教えに従い、20歳の頃には取り寄せたパーツでドラムセットを手づくりしたほどだ。
○…卒業後、ジャズドラマーとして走り出していたが、心中は「打楽器全般の演奏者として活動したい」と悩んでいた。そんな時、音響材料の研究で探していた仏具の「お鈴(りん)」を「音楽活動に役立てて」と岩手県の仏具店の女性が無償で送ってくれた。思わぬ厚意に高揚したが、お礼はまだ言えていない。女性は津波によって命を奪われたのだ。女性の家族から聞きショックを受けたが、「いただいた音を、自分がつないでいかなければ」。お守りとして大切にすることを誓った。
○…音がつないだ数奇な縁で、現在は打楽器奏者として花開き、国内外でツアーを行う。リトアニア、フランス、イギリス…音楽は国境を超えるを地で行く。10年後には、「八王子」が詰まった特別な音が完成する。どんな音色になり、それを自身がどう演奏するのか、今から胸の高鳴りが止まらない。
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