―連載小説・八王子空襲―キミ達の青い空 第17回 作者/前野 博
(前回からのつづき)
「来週、何とか時間を取って、散髪に来るわ」
突然、由江が声を上げた。
「キミちゃん大丈夫よね?」
「えっ!」
キミは驚いた。由江の有無を言わせぬ表情を見た。
「大丈夫だと思うわ」
キミは首を傾げながら答えた。
「あなた達は?」
「難しいわ。お店から家の仕事まで、いっぱい溜まっているのよ。休みも欲しいし」
他の三人は、もう疲れて、早く帰りたい感じであった。
「由江さんとキミさんが、来週また来てくれるんですか! ありがたい、みんな喜びますよ」
村上は、子ども達の健康・衛生状態が日々悪くなっていくのが気がかりであった。村の人達も良く協力してくれる。それでも、大勢の子ども達の生活は厳しかった。シラミやノミが、更に子ども達の体力を奪っていた。
村上が満面に笑みを浮かべて喜んでいた。
「恵介、由江さんとキミさんが、来週も散髪に来てくれるって。良かったな! おまえは、来週、一番に散髪してもらえばいい」
村上は、ハリネズミのような恵介の頭を撫でた。
「もうすぐ八王子行きのバスが来ますよ」
寮母さんが柱時計を見ていた。今度来るバスが八王子行きの最終バスであった。
「さあ、みんなで、お姉さん達を見送ろう」
「行こう! 行こう!」
村上の呼びかけに応えて、子ども達の間から声が上がった。子ども達の宿泊施設である、隣保館からバスの停留所までの道を、大勢の子ども達がキミ達を囲みながら賑やかに進んで行った。
―あれ、由江ちゃんはどこ?
キミは、子ども達と一緒に歌を歌って、歩いていた。ふと気づくと、横にいたはずの由江がいなかった。
〈つづく〉
◇このコーナーでは、揺籃社(追分町)から出版された前野博著「キミ達の青い空」を不定期連載しています。
|
|
|
|
|
|
湘南巻き爪矯正院 八王子院無料相談会実施中!神奈川16店舗展開 施術実績41万回超 切らない・痛くない「負担の少ない施術」 |
<PR>