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大和 文化

公開日:2022.02.18

【Web限定記事】
「あべこべの世界」楽しんで
女優・中嶋朋子さん×ピアニスト・加藤昌則さんインタビュー

  • ピアニストで作曲家の加藤昌則さん(左)と女優の中嶋朋子さん

  • 「大人だけでも楽しめるはず」と語る加藤さん

 女優の中嶋朋子さんとピアニストで作曲家の加藤昌則さんが2月14日、シリウスで開催する朗読劇コンサート「あべこべの世界」の公演に先立ち記者会見を行いました。日本一の図書館があるまち・やまとで「本に関連した公演を」との依頼に応えた2人。同館オリジナル企画について意気込みなどを語ってくれました。



 



 ――『言葉と音楽で楽しむあべこべの世界』とありますが、『言葉と音楽のあべこべ』とはどのようなものでしょうか?



 中嶋さん「既存のものをひっくり返すとどうなるか。大人でも興味がある題材だと思いますが、お子さんも楽しんでもらえるのではと思っています。「3匹のこぶた」も「!?」という表記であべこべ感を表しています。「3匹のこぶた」をひっくり返すとどうなるのかを私たちなりに掘り下げて、逆から見た世界観を表現しました。お子さんからお父さんお母さん、おじいいちゃんおばあちゃんなど大人の方にも「ちょっと違った目で見てみると世界は変わるよね」ということを感じてもらえたらいいなと思っています。童話は内容を皆さんご存じなので、逆転したということがすごく分かってもらえるのではないかと思って選定しました。加藤さんの「音楽であべこべを表現する」ことも、ものすごく深いところまでいける遊びなので、そのあたりを小さなお子様にも味わってもらえたらというのも期待しています」



 加藤さん「一般的にクラシック音楽や交響曲は『真面目に聴くもの』というイメージがあると思いますが、モーツアルトの時代はむしろエンターテイメント性がとても高く、当時流行っていたものなどを引用して、即興的に音楽を変えていくなんてことをやっていました。その中に音楽でいうギャグや冗談、例えば「きらきら星」のような明るい曲に悲しいリズムをいれるなど、皆が知っているキャラクターを真逆にして、当時の人はそれを面白がっていました。そういう部分を楽しんでもらえたらと思っています。もしかすると小さい子はキャラクターの違いしか分からないかもしれないけれど、大人は『なるほど、そういうことするのね』と気づいてもらえるような仕掛けも取り入れていきたいと思っています」



シリウスで見つけた『さかさま物語』



 ――「3匹のこぶた」「赤ずきんちゃん」を題材にしたあべこべの世界は、具体的にどんな内容で展開されていくのですか?



 中嶋さん「企画段階で「『3匹のこぶた』が逆転するのは分かりやすくていいね」というところから始まりました。「ひっくり返す」ことは、私たちのなかで固定的に思ってしまっていることを覆していくという作業でとても楽しかった。「強い弱い」がひっくり返るだけではなく、社会性がひっくり返るということでもあったり。「赤ずきんちゃんはどうひっくり返るのが面白いのか」という話をしていたら、たまたまシリウスで『さかさま物語』という本を発見して、その中に「青ずきんちゃん」というお話があって。「これは、まったく色からさかさまじゃない!」と盛り上がって、そこから今回のお話が立ち上がっていきました。コロナ禍の今は、皆が小さな世界にぎゅーっと入ってしまって「大事なものってなんだっけ?」とか「一辺倒な物の見方じゃなく社会を見れたらいいのにな」って誰もが思っているいる気がして。なにか自分の中でスイッチを切り替えられるような、「違ったものの見方にするって楽しいな」とか「世界ってもしかして見え方がもう少し変わるんじゃないかな」と、お子さんも大人の方も思っていただけるような、ライトでいて、自分のなかに何かが残ってくれるような作品にしたいなと思って取り組んでいます。



 加藤さん「朗読と音楽のコラボは、すごく難しいものだと思っていて、言葉は当然『語る』ものですが、音楽も『語る』ので、両方がかちあってしまう。たとえば、物語のクライマックスに音楽もクライマックスを持っていくと言葉が聞き取れなくなる可能性があるので、言葉が強くいけばいくほど、音楽は力を抜いたほうがより緊迫感を出せることもある。そういうことを色々やる中で気づきました。色々なジャンルの人同士のコラボが各所で行われていますが、「言葉と音楽がどうコラボするのか」という視点から聞いてもらっても面白いかもしれません」



 中嶋さん「そういう部分もあべこべになると面白い。『語りが主にあって音楽は伴奏する』という固定概念も脇に置いたら、また違った楽しみ方ができるんじゃないかな」



「大人も子どもも楽しめる」



 ――新しいステージを作っていく上で難しいことや楽しいこと、心掛けていること、気を付けていることはありますか?



 中嶋さん「楽しむことを大切にしています。「こうでなければならない」「ここまで説明しなくてはならない」と縛られると、クリエイト(創造)はどんどん小さくなってしまう。どんどん説明するようになってしまう。それよりも、その場に集まってくださったお客様とステージを共有することで生まれるであろうことに手を広げることができるかが、すごく大事。作る側としてももの凄くぎゅうぎゅうに作りこまないで、どこか当日に余白で楽しめるようにということは意識している。つい、あれもこれも盛り込みたいと思ってしまうが、少し余白があって、お客様との交流のなかで生まれるものがあるぐらいの方がいいということは新しいものを作る度に思う。見に来てくださる方も飛び込んで、どういうことなんだろうと余白を楽しんでもらえたら嬉しいですね」



 加藤さん「僕も楽しむことが大事だと思います。楽しむために、自分が何を準備するか、こういうプロジェクトに入れば、どういう風にやったらいいかをシビアに考えないといけない部分はあるけれど、考えれば考えるほど、色んなものにアンテナを張れば張るほど、実際に舞台に上がったときの楽しみが、従来の自分がやってきたクラシック音楽の演奏という枠ではない楽しみがある。それを知ることで自分がやるクラシック音楽の中にちがう発見や発想が生まれる。異ジャンルに挑戦することはとても楽しいしやりがいを感じる。結局、自分が新しく発見したものを出すことは、聞きにきたお客さんにも知らなかった時間や空間を共有できると思う。僕は作曲が専門だが、クリエイトする立場の人間としては、新しいものを共有するために何をしていくか、ということは自分を掘り下げていくために大事なこと。中島さんと一緒にやるのは楽しいし刺激的。それを多くの人と共有できたらいいな」



――皆さんにメッセージを



 中嶋さん「手放しで楽しんでいただける舞台にしたいと思っているので、いろんなことはちょっと横に置いて、素直に『楽しい時間だったな』と思っていただけたらいいな。どんどん世界に飛び込んでもらえたら嬉しいです」



 加藤さん「『3匹のこぶた!?』は特に小さい年齢の子をターゲットですが、『赤ずきんちゃん!?』は「赤ずきんちゃんが青ずきんになっちゃった」という単純な面白さのほかにも色々な面白さがあるので、大人も子どもも興味を持ってもらえると思います。図書館という場所は幅広い世代にオープンな空間。『赤ずきんちゃん!?』はそれと同じようなものかなと思っているので、興味があればお子さん連れじゃなくても来てもらえると嬉しいです」

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