新規連載 海老名むかしばなし 第6話「門石(かどいし)」
門沢橋に門石という石がある。場所は渋沢川の元の茅ケ崎八王子往還沿いに用田伊勢原線を約五十メートルほど下った橋のそば(門沢橋一〇一〇番地付近と思われる)である。
門石は、長円形で、長径一メートル位、短径六十センチメートル位、亀の甲羅にとてもよく似ており、昔はよく農夫などが畑仕事の帰りにこの石の上で足や農具を洗ったことなどを憶えている。
伝説によると、昔、相模国分寺の伽藍を建立するとき、海から恐らく船か何かで運んだのではないかと思うが、その途中、ここへ落してしまった礎石のための石が、そのままになっているんだという言い伝えがある。
また、この門石はいわくつきでこの石を陸へ揚げると地区内に騒動が起こるといわれていたため、渋沢川の川床にそのままになっていたが、大正の初期に一度、村人が協力して地区内の渋谷神社境内に運び、神官におはらいをしてもらって祭ったことがあった。
ところが、その後地区内に小作騒動が起こり、年貢の問題で某大地主と対立し、小作人が団結して地主の家に実力行使をしようと一回、相模川のほとりの松林内へ集合し(その当時は松が密生していた)、たき火をして、むすびをたき出し、気勢を揚げ、まさに地主の家に乱入しようと向かう途中、これを聞きこんだ村の役員がちょうちん片手に出動し制止して引き揚げさせ、無事すんだことがあった。
せっかくのこの石も神社境内に祭られたが、再びやむなく元のところに納めてしまったのである。
この話を知っているのは地元の年輩の者ばかりだと思う。このような言い伝えを持つ石だが今は川底に埋まっていて人の目にとまることはない。また、「門石」の名前の由来も門沢橋にあるからだと思われるが、何分にも古いことなので定かではない。
参考資料/海老名むかしばなし
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