10月26日に第10回大会を開催する座間市囲碁連盟の会長を務める 工藤外雄(ほかお)さん 南栗原在住 77歳
碁石で対話し、絆繋ぐ
○…「囲碁との出会いがなかったら、今頃自分は何をしているだろうか」――。ふと思いを巡らせることがある。初めて目にしたのは、高校を卒業し故郷を離れて自衛隊へ入る前の晩だった。早朝の出発に備えて高校の宿直室で一夜を明かしていると、先生と同級生がおもむろに始めたのが囲碁だった。当時はルールもわからず、ただ対局の運びを見つめるだけだったが、以来50余年、囲碁は日々の楽しみであり、コミュニケーション手段であり続けた。
○…山形県の小さな集落で、14人兄弟の12番目として生まれた。四方を囲む山の中に、3軒の家がぽつぽつと建つ。そんな懐かしい山里も、今ではダムの底に沈んだ。故郷を離れ、7年間を自衛隊で過ごした。およそ8カ月間にわたる入院を機に、製造会社に転職。どこでも、囲碁が人と自分を結んでくれた。
○…市囲碁連盟の活動に加え、趣味や特技を生かして地域の住民が教える「チョッピリ先生」や小学校に赴き教える「ゆうゆうクラブ」など、地域の子どもたちへの普及活動にも力を入れる。「結構楽しんで活動してるよ」。中原小学校にはもう13年も通い、その楽しさを伝え続けている。子どもたちの保護者に、よく話すことがある。「負けた時に、悔しさをまず知って貰いたい。そこから立ち直って、また成長する過程を、囲碁を通じて学んでほしいんです」。時には、少し見ぬ間に急成長し、大人の度肝を抜く子どももいる。「子ども達は理屈じゃなくて体で覚えちゃうからね」
○…囲碁の別名に、「手談」というものがある。碁盤に碁石を置く指先によって、対戦相手とまるで会話をするようにコミュニケーションを取るからだ。「例え口で話さなくても、一局打つと、とたんに旧知の仲のように通じ合える」。26日の大会では、45の碁盤が並び、同じ数だけの対話が生まれるはずだ。老若男女、国籍問わず。そのくせ奥が深いからやめられない。
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