地元で4年ぶりの作品展が開催中(ハウスプラザ按針2階で今月15日まで)の画家 木村 利三郎さん 逸見出身 87歳
人生、百年じゃ足りない
○…都市の崩壊と再生、そして宇宙−。画家、木村利三郎の世界観に引き込まれる。母親に「絵はヤクザが描くもの」と言われて育った少年が、30を過ぎてから本格的に美術の道を志し、単身ニューヨークに渡った。それから約50年。世界各地で個展を開き評価を得ながらも、故郷への想いは特別だ。今回、地元逸見で4年ぶりの個展。「人の温かさが懐かしいですね」。そう語る眼差しもまた温かい。
○…戦後、逗子に構えたアトリエで米兵に版画を教えながら、話に出てくるニューヨークに憧れを抱いていた。背中を押したのは、美術評論家をめざしていた法政大学在学中に、教授から言われた一言だった。「お前は絵描きになれる可能性がある。だから本物を見て来い」。5万円を手渡されたがそれでは足りないため、アトリエを売り払った。1964年。日本中が歓喜に沸く東京オリンピックを見ることなく飛び立った。
○…人の真似をするのは駄目。芸術家が集うアパート、通称クレイジーハウスで描き続ける日々が続いた。数年後、画商の目に留まり契約を結ぶようになる。マンハッタンのビル群と対峙しながら版画、油絵、水彩など多彩に制作。忘れられないのが2001年9月11日。数キロ先にあったツインタワーが一瞬で消えた。自身のテーマである都市の崩壊が目の前で現実のものとなった。そして再生。やがて都市は天高く伸び上がり、宇宙へと向かう。
○…現地で永住権を取得し、ひとり創作活動を続ける。目を向けるのは宇宙空間。そこに生物はいるのか。地球がその生物に攻められた時、人類はひとつになれるのか。SF小説のような壮大な世界観を油絵で表現する。今年は米寿。「いい人生でしたよ。絵描きじゃなければもっと早く死んでいたでしょう。でも、人生は100年じゃ足りないですね」。もっと先のことを知りたい。未知のものを描きたい。その想いが、今もキャンバスの前で筆を握らせる。
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