稲岡町の神奈川歯科大学では、校内に設けた資料館の一般開放を4月から始めている。これまで、医療従事者や学生らを対象としていたが、開館から5年を機に「より多くの人に見てほしい」と予約制で見学を受け付けることになった。
100年の歩み辿る
「命の神秘に出逢う瞬間―私達にもっとも身近な小宇宙の体験」をテーマに、開学から100余年という同大の歩みと人体標本を紹介する資料館。「100年資料室」では、解体新書のほか、同大の敷地内にあった海軍機関学校で英語の教鞭を執っていた芥川龍之介の自筆草稿「レオナルド・ダ・ヴィンチの手記」(抄訳)など貴重な資料が並ぶ。ほかには100年前から現代までの「歯科診療室」の変遷を辿るコーナーもある。
「生と死」の境界
メインとなるのが、同大名誉教授の横地千仭(ちひろ)氏が献体を受けて手掛けた人体標本だ。液浸人体や臓器、骨格の標本のほか、縄文人の全身骨など約220点を展示する。プラスティネーションという技術を使ったものもあり、学術的にも貴重な資料だという。解剖学の発展に大きな足跡を残した同氏は、国内で10万部、世界で300万部以上発行する「解剖学カラーアトラス」の共同著者。同書は解剖を学ぶうえでバイブル的存在と言われているもので、室内ではこれに掲載している標本を間近に見ることができる。
また、同氏は解剖学(Anatomy)の視点や要素を取り入れた芸術作品(Art)―「アナトミーアート」の創作にも力を入れており、「口からトランプを出している骸骨」「頭蓋骨に描いた世界地図」など、生と死を独特のユーモアで表現した絵画や立体作品も見ることができる。
月2回の予約制
見学プログラムは、解剖学のガイダンスと資料館・標本室の見学、アナトミーアートの紹介など正味2時間。同大の前解剖学教授の高橋常男氏がガイド役を務める。同氏は「生と死の境界を目の当たりにし、命の尊厳を感じ取れる場所。健康科学や身体について意識する機会に」と話す。見学に訪れた参加者からは「身体の構造がよく分かった」「命の重みを感じた」などの感想が上がっているという。
一般公開は月2回で、5月は9日(水)・15日(火)、6月は13日(水)・20日(水)を予定。時間は午後2時から4時、参加費2000円、事前申し込み制(定員15人)。詳細は同大担当【電話】046・822・9351
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