でこぼこ道の子育て記 16.背中を押してくれた父一般社団法人sukasuka-ippo代表理事 五本木愛
―現在の連載は10年ほど前、子どもたちがまだ小さい頃、介護をしていたときの経験を書いたものです―
義父の病気の進行を少しでも遅らせようと日記やドリルを続けていた私に、可哀想だと主張する夫。どれだけ悩んでも、やっぱり納得が出来ませんでした。誰かに聞いて欲しかった私は、相談できる相手がいないか思い巡らせ、母には「きっと余計な心配をかけてしまう」。そんな時浮かんだのが、父の顔でした。決してお父さんっ子ではなかったですし、悩みを相談した事なんて一度もありませんでした。でも何故だかその時は”父なら”と思ったのです。「もしもし、お父さん?私だけど、ちょっと聞いて欲しいことが…」。そう電話すると、父は少し驚きながらも、すぐに時間をとってくれました。
父の仕事の休憩に合わせ、子ども連れで昔からある定食家さんで待ち合わせ。父は普段通りの様子でお昼を注文すると孫たちと楽しそうに遊び始めました。私はその姿を見ているだけで、胸が詰まりました。義父のリハビリの事、父の気持ち。続けさせる事は間違いなのか? 涙を堪えながら話す私を、遮ることなくただ静かに聞いてくれました。それから一言だけ、「お前は何も間違ってない。思う通りにやる事が、一番正しい答えだよ」と。涙が溢れて止まりませんでした。「うん」。私はそう返すことで精一杯。嬉しかった。どこかで、父のその言葉が欲しかっただけなのかもしれません。そして、それ以上の事も言わない―と分かっていたのかもしれません。でも、その言葉のお陰で私はまた一つ強くなれたと今でも思うのです。-次回に続く
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