でこぼこ道の子育て記 30.次男との幸せなひととき一般社団法人sukasuka-ippo代表理事 五本木愛
―現在の連載は10年ほど前、子どもたちがまだ小さい頃、介護をしていたときの経験を書いたものです―
義父の病院は自宅から近く、私はたくさん会いに行こう!と決めました。今回は入院中の数あるエピソードの中から、義父と次男の不思議な絆について。
ある日、病院へ初めて2人で行った時のこと。義父を見つけた息子は「じいじ〜!」と嬉しそうに飛びつきました。この時もう家族のこともわからなくなっているはずの義父が、息子を見てニコッと笑い「来たなぁ」と抱きしめたのです。これには私も看護師さんもびっくり。それまでの状態からは、信じられないことでした。本能なのか、その瞬間だけ何かを取り戻したような、そんな表情。しばらくの間、膝に座らせ顔を覗き込んだり頬ずりしたり。それはとても幸せな光景でした。帰り際「じいじ〜バイバイ!」と手を振る息子に、涙を浮かべながら笑顔で手を振り返す義父。2人の間には何か特別な絆があるのかもしれません。
誕生日には「じいじ、おたんじょうびおめでとう!」との言葉を伝えに。顔や言葉には出なくとも、きっとどんなプレゼントよりも嬉しかったんじゃないかな。ただ、病気は進行しており、呼びかけにもなかなか反応しなくなっていました。それでも息子は「じいじ〜!じいじ〜!」と声を掛け続け、やっと気が付いて目が合うと、ニッコリ。そして膝に乗せ、大事そうに抱きしめるのでした。ここでの触れ合いは、時間にしたらほんのわずかでしたが、2人にとっても、かけがえのない時間だったように感じます。 -次回に続く
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