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横須賀・三浦 人物風土記

公開日:2024.08.02

横須賀美術館で展覧会を開催する画家
新恵(しんえ) 美佐子さん
横須賀市秋谷在住 60歳

インドで変わった人生観

 ○…墨や顔料を用いた独特の画風で国内外で個展を開いてきた。作品のテーマの多くは繰り返す命の象徴としての「花」。美しさや儚さではなく、生命そのものを表現することで本質に迫る。横須賀市西部に拠点を置いて30余年が経つが、市内での展覧会は初めて。「学芸員の方が自分のことを知ってくれたことに感謝」と目を細める。

 ○…赤塚不二夫作品に夢中だった幼少期。「天才バカボン」や「おそ松くん」のキャラクターをひたすら描いていた。好きが高じてアートの道を志し美大へ進学したものの、両親の理解が得られず自ら生活費を稼ぐ日々。大学院時代はハム工場、居酒屋、バーと1日で3つのアルバイトを掛け持つ生活を送るが、作品制作が疎かに。卒業時、本末転倒の状況を見かねた教授から掛けられた「お前、見損なったよ」という一言が重く響いた。

 ○…その後もしばらく絵筆を握ることが出来ず、精神的に「どん底」状態の中、家出同然で飛び出した先はインド。バックパッカーとして各地を放浪した。1カ月間にも及ぶ瞑想体験や、感染症で衰弱した所を現地マフィアに助けられるなど、旅先では未知の連続を体験。「手足があって目が見えるのになぜ描けないんだ」と自らの悩みを笑い飛ばすインド人の陽気さに触れ、徐々に心に日が差してきた。

 ○…現在の作品づくりの核となる「ターコイズシリーズ『花』」のインスピレーションもそうした生活の中で生まれた。「インドのおかげで今の自分がある」。その恩返しとして、現地の美大生や子どもを対象に「日印美術交流」と題した無料のワークショップを定期的に実施。日本美術のすばらしさを伝えるとともに、インド文化の魅力も日本へ浸透させていく。

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