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横須賀・三浦 経済

公開日:2026.01.01

大河ドラマ決定でブームへの助走
横須賀は「小栗推し」で熱気

  • ヴェルニー公園にある小栗上野介忠順の胸像。写真スポットになりそうだ

 2027年のNHK大河ドラマが『逆賊の幕臣』に決まった昨年3月の発表以来、主人公となる幕末の幕臣・小栗上野介忠順(1827〜68)への関心が日増しに高まっている。小栗が建設に尽力した横須賀製鉄所(現在の米海軍横須賀基地の位置に相当)を擁する横須賀は、物語の重要な舞台となることが予想され、ドラマファンや観光客から熱い視線が注がれるのは必至だ。今年は受け入れ態勢の準備など、「小栗ブーム」への助走期間となりそうだ。

 日本の近代化と横須賀発展の礎を築きながら、明治維新後は「逆賊」の汚名を着せられた小栗。その復権と再評価は地元にとって長年の悲願であった。今回の大河ドラマ決定は、その功績を全国へ発信するまたとない好機となる。

 注目すべきは、ドラマ放送に先駆けた文化芸術面でのアプローチだ。市内では早くも、小栗の波乱に満ちた生涯をテーマにした新作ミュージカルや、伝統芸能である「能」の舞台公演が発表された。硬派な歴史的評価にとどまらず、エンターテインメントの力を借りて、その人物像や情熱をより幅広い層へ浸透させる狙いがある。

 ミュージカルは、団体「PROJECT OGURI」が10月の横須賀公演に向けて準備を進めている。オリジナル劇で、東宝や劇団四季で活躍してきたミュージカル俳優陣が演じるほか、横須賀出身の役者にもオファーをかけているという。その前段として、「地域の歴史を知る歌劇〜小栗忠順〜」を2月11日(水)に横須賀市はまゆう会館で上演。小栗の生涯をラップ・ダンス・和楽器のコラボで表現する意欲作だ。

 新作能「小栗」と題した舞台も11月に横須賀芸術劇場で演じられる見通しだ。横浜市在住の観世流能楽師・清水義也さんを中心とした実行委員会が企画。現代の横須賀に住む青年が、小栗の霊と思しき老人と遭遇して群馬県高崎市の東善寺を訪れ、法要に参加して小栗と妻の再会を果たす──という筋書きだ。今後、清水さんが能の解説などを交えながら、市内で広報活動を展開していく。

 横須賀市内の観光スポットを案内する「NPO法人よこすかシティガイド協会」も、横須賀製鉄所の遺構やヴェルニー公園など、小栗ゆかりの地を巡る新たな観光ツアーの造成に乗り出した。同協会のメンバーである森田攻さんは、「小栗が表舞台に立ったのは8年、横須賀製鉄所建設でこの地を訪れていたのはたった4年。関係性を見つけ出すことがなかなか難しい」とこぼすが、有志で小栗研究会を発足して資料収集と情報交換に励んでいる。22年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』放送時には、三浦一族と関連のある衣笠エリアなどに多くの観光客が詰めかけた実績があり、これに続く誘客効果に期待を寄せている。

 地元事業者を中心に、小栗にちなんだ新たな土産品開発も進められている。日の出町で飲食店を営む齊藤秀一さんは、小栗が遣米使節で持ち帰ったとされる「ねじ」などをテーマに、歴史物語を伝えるツールづくりに挑むという。

 大河ドラマファンを迎え入れる拠点施設の誘致を求める声もある。これを含め、地域一帯を盛り上げのための施策が横須賀市の次年度予算にどのように反映されるかも注目だ。

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