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いきいきシニアの「元気の源」は

社会

掲載号:2019年10月4日号

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小品盆栽愛好家小網代在住 宇野登さん(85)
小品盆栽愛好家小網代在住 宇野登さん(85)

 ひとつの鉢のなかで、植物の生命力、移ろいゆく四季や自然美を表現する盆栽。世間では「老爺の趣味」というイメージも強いが、宇野登さん(85・小網代在住)は30代半ばで手ずから育てる楽しさに魅了された。それから半世紀。熱中するあまり、鉢や飾り棚をも自作し始め、その創作意欲は歳を重ねても尽きることがない。盆栽は手塩にかけた子どものような、雨の日も風の日も共に人生を歩んできた友人のような存在だ。「ここまで長く続くとは」。半生を振り返りながら、感慨深げに話した。

「大変。だからこそ楽しい」
  
 盆栽を始めたのは、35歳の頃。「退屈しのぎで」と話すように、いわゆる現代のガーデニングのような気の張らない趣味だった。きっかけを作ったのは、俳優の中村是好氏(1900―1989)が出演していたテレビ番組。氏は晩年、小品盆栽の草分けとして名を馳せ、日本小品盆栽協会会長を務めた愛好家だった。

 手始めに松や紅葉を手に入れ、見様見真似で育て出すと奥深さに触れ、楽しみに目覚めた。小網代湾そばの自宅は潮風が当たり、育てるには不向きな立地。それでも手間を惜しまず愛情を注ぎ、ともに歳を重ね、自宅には今、200種2千株を超える盆栽が専用のベランダにひしめき合うように並んでいる。

 盆栽の世界で傑作と名高いものは、樹齢数百年の古木が多く、歳月は価値を判断するひとつの材料になるという。「これは50年くらい」と実生から育てた小ぶりの鉢を手に取る。「こっちは数年だから新しいもの。気の長い趣味だよ」

 苦労を尋ねると、「どれも大変だからこそ楽しいのかな」と話し、「唯一、挙げるとしたら、世話で家をあけられず、泊まりの旅行ができないこと」と冗談めかして笑った。

唯一無二の作品に

 「既製品にはない良さがある」。育てることに飽き足らず、次第に鉢や飾り棚・卓を自作するようになった。鉢は是好氏との出会いで盆栽鉢づくりの道を切りひらいた故・今岡町直氏に師事。販売目的の量産ではなく、あくまで自分自身の楽しみのためで形や大きさ、文様、釉薬など同じものはひとつとしてないという。鉢と棚とで三位一体。伝統を重んじながらも枠にとらわれない趣向が見る者の好奇心をかきたて、愛好家仲間からの評価も高い。「どうやったら全体が良く見えるか。相性も考えながら作る」と語る。専門店で容易に買える時代になっても貫き通しているこだわりだ。

少年時代に原点

 ものづくりへの情熱と手先の器用さは、少年時代に培ったと言っても過言ではない。

 出身は愛知県岡崎市。食糧難の時代、家が裕福ではなかったせいか、欲しいものは構造や素材などをつぶさに観察し、自作することが当たり前だった。

 料理人をめざしたのもそうした気概があったから。戦後まもなく修行に励み、油壺の観潮荘の初代板前として腕をふるい、独立後は三崎下町に食事処「天常」を開業。およそ40年にわたり、地元住民や観光客の胃袋を満たしてきた。

国内外で人気じわり

 会長を務める「湘南はまゆう小品盆栽会」は、発足して30年ほど。ベテランぞろい、約20人のメンバーと月に1度の活動を楽しんでいる。会員の高齢化は目下の悩みだが、一方で近年、苔玉やミニ盆栽が「グリーンインテリア」として若い世代から注目を集め、海外では日本文化「BONSAI」として進化を遂げるなど、追い風も感じている。「楽しみ方は人それぞれ。最初は『これが可愛い、好き』からで良いと思う。見てもらえるだけで嬉しいものだから」

 今月には毎年恒例の展覧会が控えている。丹精込めて手掛けた作品がお披露目される晴れの場であり、また新たな1年の意欲が呼び覚まされる場。「まだまだ元気で、この先も続けていきたいね」。夢中になれる一生ものの趣味こそ生きがいだ。

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