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逗子・葉山 社会

公開日:2018.10.19

ニホンミツバチと共に里山復活【2】
ミツバチは環境のバロメーター
「葉山のテロワール広めたい」

  • 巣箱を手にする金子さん

 葉山町在住の金子昌司さんは長柄地区の谷戸でニホンミツバチの養蜂をしています。その目的は葉山の豊かな里山の復活。ハチミツだけでなく、ミツバチが人間にもたらしてくれるものとは。人間社会と環境の両面から探ります。

 ニホンミツバチの採蜜は基本的に春か秋の年1回。よく晴れて湿度が低い日を選んで行われる。ハチミツの状態が安定する糖度80%にするためだ。

 現在、5群れの世話をしている金子さん。10月8日には、友人らとともに採蜜を行った。ニホンミツバチはおとなしく、人間を刺すこともめったにない。金子さんはこれまで10年間、一度も刺されたことがないという。

 この日は台風24号の暴風による影響で1つの巣箱に隙間ができ、スズメバチが侵入。1群れが逃げてしまった。巣箱に包丁を入れて持ち上げると「軽いな」とポツリ。ハチミツはほとんど入っていなかった。「活発な群れなのにこれだけ少ないということは、貯蜜量に対してハチたちの消費量が上回ってしまっているということ。酷暑や長雨、台風の影響で花が少なく、集蜜活動ができなかったのでしょう」と分析する。

 また、今回ミツバチたちはこれまでにないほど攻撃的で、金子さんは養蜂を始めてから初めて顔を覆う面布を被った。「台風で相当ストレスがかかったほか、冬に向けての準備(=貯蜜)が進んでおらず、焦りがあったのでは。そんなときに作業したものだからミツバチたちも必死だったのだと思う」と振り返る。

「葉山の味」

 今回採れた貴重なハチミツを味見をすると、華やかな香りと優しくスッキリした甘さが口に広がった。ソムリエ資格を持つ金子さんは「これが葉山の“テロワール”です」と語る。フランス語で「その土地の味」を意味するこの言葉。ニホンミツバチの飛行範囲は2Kmで葉山で咲いている花の蜜からできていることから、文字通り「葉山の百花蜜」になっている。

 セイヨウミツバチとは異なり、ニホンミツバチの採蜜量は少なく、今回のように自然環境にも左右される。そのため、事業化するのは難しいが、将来的には「葉山のテロワール」を多くの人に味わってもらいたいと考えている。

 また、ハチミツとともに採れる蜜蝋も大きな資源だ。古代エジプト時代から利用されてきた蜜蝋は、ミイラの防腐剤として使われたり、ロウソクやリップクリームなど、多様な利用方法がある。金子さんは「どちらも葉山の恵みでできたもの。将来的には、多くの人にその魅力を知ってもらいたい」と話している。

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