本紙「砂浜で生まれたものがたり」を詩人の中原かおりさんと共同連載中の角田元さん(78・葉山町堀内在住)が貝殻で作った動物の作品を毎週土曜日に披露している「かいのどうぶつえん」。あす6月14日(土)に記念すべき第1000回を迎える。
角田さんは毎回、物語に合わせて作品を制作しており、1000回記念の題材には『アラビアンナイト(千夜一夜物語)』から『アリババと40人の盗賊』の「開け ゴマ」のシーン=写真下(角田さん提供)=を選んだ。洞窟を大型の巻貝「ヤツシロガイ」で表し、40人の盗賊はカエルで表現。顔には「アサリ」を使用し、目は小型巻貝「スガイ」の蓋を張り付けた。よく見ると列後方の盗賊は暇を持て余し、口が開いていたり、物を食べていたりなど、角田さんの遊び心が見て取れる。木に登って様子をうかがうアリババ役はサル。サルは「スズメガイ」と「アマオブネ」を組み合わせて作っている。
同作品は約2年前に900回記念が終わって間もなく、「1000」にちなんだテーマ探しから始まった。「『千夜一夜』にすることは割と早く決まったが、その中のどの話にするかは時間がかかった」と明かす。今年3月には材料揃えを始め、1カ月以上の時間をかけて完成させた。その間、写真を撮っては納得がいかず作り直すといった作業が何度かあったという。出来栄えに関しては「圧倒的なボリューム感と迫力は出せたと思う」と満足げな表情を見せた。
作品を作るにあたって本を読み直したという角田さん。「『開け ゴマ』の台詞は知っていても、物語自体はよく知らない人もいると思う。面白い作品なのでぜひ読んでみてください。映画にもなっていてビデオでも見られますから」と鑑賞を薦める。
同作品は14日から1週間、角田さんの自宅玄関先のショーケースでの展示(作品が大きいため1部)や、7月1日(火)から8月24日(日)まで町立図書館の入口ギャラリーで行われる展示会で見ることができる。
声が励み
角田さんが貝殻で動物を作るようになったのは2000年頃から。妻の貝殻拾いに付き合ったときに、拾うだけではつまらなくて貝を組み合わせたのが始まり。「大げさに言うと死んでる貝を組み合わせたら、そこに新しい生命が宿った」。はじめは家族に見せるだけだったが、次第に物足りなくなり、玄関に写真を飾るようになった。
「割らない・塗らない・削らない」をモットーに、自然のままの組み合わせで作るリアルな動物たちは評判が広がり、本紙をはじめ、テレビや新聞などで度々紹介されるようになり、「やめるにやめられなくなった」と笑う。
2006年に「ニワトリ親子」を発表してから毎週一度も休まず新作を作り続け、たどり着いた1000回。「楽しみにしてくださっている皆さんの声に励まされ続けてこられた」と感謝を口にした。