湘南のフォトグラファーとして、3月5日に講演する 市川 紀元さん 片瀬在住 56歳
海と暮らす人々の一瞬を
○…広がる青い空と江の島、太陽がきらめく海面、夕映えの荘厳な富士山…。ライフワークとして20数年にわたって風光明媚な湘南の風景をファインダーに収めてきた。爽やかな風や潮の香り、湿度を含んだ冷気など、その場に居なくとも、見る者にその臨場感や開放感までも感じさせる作風は、多くの人を魅了する。「講演は初めてだけれど、普段SNSや雑誌を見てくれている人とリアルに交流ができるのは嬉しい」と微笑む。
○…戸塚区出身。フォトグラファーとしてのルーツは、船乗りの父親にある。「父が外国で撮りためた写真をよく見せてくれて」。20歳ごろ、サーフィン中に見かける、音もなく訪れる美しい夜明けや、水平線が夕焼けににじむ瞬間に感銘を受けた。父から譲り受けた一眼レフで撮りためるも、「当初は似たりよったりで面白くない写真ばかり」と苦笑い。「23歳の時、父のカメラが壊れて、自分の一眼レフを買った時から、本格的なカメラ人生がスタートしたと思っている」
○…「湘南はビーチカルチャーが成熟していて、人と海がつながっている。海がある生活が当たり前で、人生を楽しもうという魅力的な人が多い」。その言葉どおり、波間を走るサーファーや散歩する愛犬家、砂浜に佇むシルエットなど、海と暮らす人々の日常やストーリーを印象的に切り取っている。「良いなと思ったその瞬間に撮らないと、ほんのわずかな違いで空気感がまるで変ってしまう」
○…1週間分の天気を把握しながらスケジュールを組むのが日課。「四季を通じて太陽の位置も人の動きも違うし、違う表情を見せてくれるから」。自然が相手だけに、最高の瞬間に出会えた時の喜びはひとしおだ。「去年は西の海にお辞儀して帰ってくるぐらいの夕景に出会えた。あんなにきれいな富士山は3年に一度あるか無いか」と満面の笑み。「昨日よりも良い写真を」。今日も熱い思いでファインダー越しに湘南をみつめる。