33年ぶり2度目の聖地を目指す藤嶺藤沢。98人いる大所帯の中で唯一のマネジャーを務めるのは、3年生の金子伊織だ。
元々は控え捕手。中丸洋輔監督から打診を受け、昨年の冬、マネジャーになることを申し出た。無論、選手としての未練がなかったと言えば嘘になる。それでも「自分がチームのために何ができるか」。考え抜いた末に出した結論だった。
今や監督に「自分の右腕」と言わしめる名黒子。選手が言い出しづらいことを代弁したり、投手陣の疲労を鑑みてオフを打診したりと選手とのパイプ役を買って出る。チーム事情を第一に考える裏方としての働きぶりは、大学からも誘いがかかるほどだ。
強豪校の一角を担う古豪は数年来、不振にあえいできた。昨夏はまさかの初戦敗退。昨秋も今春も、思うような結果が残せなかった。「今年こそは」。雪辱に向けた共通の思いが、チームを頂点へと駆り立てる。
今年投手にはプロ注目の左腕、矢澤宏太(3年)がいる。ただ、「主力ではあっても、ワンマンチームでは決してない」と中丸監督は評する。今年は「変革」をスローガンに部員自らが練習メニューを組み立てるなど、考える野球で組織力に磨きをかけてきた。
躍進に駆ける思いは、裏方も同じ。「やれることは全てやり切りたい。悔いは残したくありませんから」と迷いはない。
ただ、一つだけやり残したことがある。今月末に控えた静岡での遠征試合。選手として出場機会が与えられ、”最後の夏”が一足先にやってくる。「野球をしている姿を、一度でも親に見せたくて」。陰で素振りを重ね、厚くなった掌に視線を落としながらはにかんだ。「やっぱり特別な思い。親にはいいところを見せたいですね」
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