3塁コーチャーボックスから身を乗り出し、小柄な身体をめいっぱい使って声を張り上げる。
「回れ回れ、勝負しろ」
守備の捕球を確認し、走者に的確な指示を飛ばす。それは自らにとってはベンチワークではなく、選手としての”プレー”だ。
代々3塁コーチャーを「10番目のレギュラー」と位置づけ、重要視する湘南工科大付属高。今夏、その役割を任されたのが3年の吉田未暉人(みきと)だ。
昨年主力だった3年が引退し、現ナインで夏を経験したのは投手と捕手のみ。公式戦での実戦経験が足りず、秋大会では慶応と日大藤沢に敗れ、県大会進出は叶わなかった。
力不足は実感している。「うちに10―0の野球はできない。1点、2点をもぎとるかが勝負の分かれ目になる」と榊淳一監督。だからこそ、正選手9人に加えた得点場面での指示役に重きを置いてきた。
同部では、3塁コーチャーを「専門職」として育て上げる。守備の捕球位置やボールを中継するラインだけでなく、試合前の練習で対戦相手の細かな癖を見抜く訓練も重ねていく。
チームの中でとりわけ明るく、声の通りもいい。吉田が起用されたのはそんな理由から。今春からコーチャーとしての能力を買われ、ベンチ入りしてきた。役割は、試合展開を俯瞰(ふかん)し、チーム内で情報共有しながら得点シーンに結びつけること。「自分の判断ひとつでチームの勝敗が決まってくる。責任感と誇りを持ってやっています」と言葉に力が入る。
今年チームスローガンに掲げるのは「一笑懸命」。そんなに苦しい場面でも笑顔を忘れずにいればきっといい結果に結びつく―。「それを信じてやってきた。夏も貫いて、ひとつでも多く勝てたら」
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