藤沢 社会
公開日:2019.01.04
週末限定でサンドアート
人と縁つなぐ「砂イルカ」
毎週末、片瀬西浜に突如出現するサンドアートが砂浜を訪れる人の目を楽しませている。モチーフのイルカは一見すると本物と勘違いしそうな精巧な出来で、その表情は何とも愛くるしい。手掛けているのはその名も「江ノ島イルカ部」。看板製作業を営む草薙徹さん(57)=大和市下鶴間=が趣味で始めた活動に共感するメンバーが一人ひとり増えていった。
雲の隙間から光が注ぐ師走の昼下がり。新江ノ島水族館前の砂浜ではメンバーらが作業に取り組んでいた。
使うのはスコップと手のみ。設計図もなく、みるみる本物そっくりのイルカが仕上がっていく。「全体的なリアルさはもちろん、ポイントは目かな。これでイルカに命が入るんだ」。手を動かしながら草薙さんは朗らかな笑みを浮かべる。
きっかけは10数年前。家族旅行で訪れた伊豆で台風に見舞われ、「やることがないから砂浜で砂いじりをしていた」のが始まりだ。以来家族旅行の際はサンドアートを作るのが恒例で、4年ほど前からは毎週末、一人で西浜に出かけ、砂イルカを作るようになったという。
作品は2頭が仲睦まじく寄り添うものやボール遊びしているものなど様々。いずれも完成度が高く、写真映えすることからSNSでも評判が広まっていった。
メンバーの加藤希代子さん(46)=善行=もインスタグラムで活動を知った一人。「数日すれば波や風で元の砂浜に戻る。はかないけど、温かさがある」と魅力を話す。
草薙さんにとって、イルカ作りは創作する楽しさだけではなく、人との縁をつなげてくれる大切なものだ。この日も制作が一段落すると見物人が次々と訪れた。藤ヶ岡中学校3年生の女子生徒は「本物そっくり。顔も可愛い」と声を弾ませる。
メンバーは現在30人近く。遠くは北海道にもいるという。「仲間と一緒に作った作品をたくさんの人に観てもらえるのが醍醐味」と草薙さん。今後について尋ねられると「きっと一生続けていくんでしょうね」と笑った。
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