メキシコ・チアパスの州立大学打楽器科で准教授として教鞭をとるマリンバ奏者 古徳 景子さん 大鋸在住
音楽の力で国際交流を
○…日本人マリンバ奏者として南米に住み、メキシカンマリンバの聖地とされるチアパスの大学で教鞭をとり10年になる。1年の半分は日本で演奏活動を行う中、11月2日は東勝寺で行われるコンサートに出演。「マリンバの音色が一番の魅力ですが、毎回来てくれる地元の方にも演奏家としての成長を楽しんでいただけたら」と、初披露曲も用意している。
○…母が音楽教師で音楽はいつも身近にあった。10歳の頃、広島の祖父が4オクターブのマリンバを買ってくれた。当時は「すごく大きく感じたしうれしかった。これはちゃんとものにしなくては」。一浪の苦労の末、東京芸大の打楽器科に進み、マリンバのほかティンパニなど打楽器全般を習得。卒業後もアメリカやスウェーデンでクラシックマリンバ奏者としての道を究めた。
○…小学校と幼稚園に通う3人の子の母として家族と市内で暮らす。「子どもと一緒にいるときはマリンバのマの字も出さない」ときっぱり。母業と演奏家の切り替えを大事にしている。料理好きで、子どもが好きなタコスは生地から作ることも。
○…2020年、メキシコの五輪選手団の受け入れ地となる広島で、演奏をして選手を出迎える。演奏予定の曲が2つある。大好きだった祖父の名前からとった『学』は、祖父の戦争体験や子どもの頃に案内された広島平和記念資料館で学んだ戦争の恐怖、鎮魂の思いを曲に込めた。もう一つの曲『希望の地』は、122年前チアパスに初めてたどり着いた日本人移民への敬意や歴史を伝える曲だ。「メキシコ人は日本人に優しい。言葉じゃ伝わらないことも音楽の力で気持ちが一つになれる」。広島で演奏するのはメキシカンマリンバ。音楽を通じて歴史を超えた国際交流を願っている。