「第1回警察小説大賞」を受賞した「ゴーストアンドポリス GAP」の作者 佐野 晶さん(本名:佐野活宣) 辻堂在住 55歳
55歳の新人 遅咲きながら
○…第一声は「まさかこの年で受賞できるとは」。小学館の「第1回警察小説大賞」で全国108作品の中から初の栄誉に選ばれた。本業は映画ライター。オリジナル小説としては自身処女作でもある。「本当に夢見心地で」。ただそれも束の間。待ち受けていたのは書籍化に向けた「鬼の改稿作業」だった。改稿を重ねること実に7回。半年かけ、ようやく労作が形になった。「喜びもひとしお。俺の小説、みんな読んでくれるかな」
○…『そして父になる』『三度目の殺人』『アルキメデスの大戦』など人気作のノベライズを数々手掛けてきた。そんな経歴をして、今回の執筆で気付いたのは創作の楽しさ。骨格はもちろん、舞台設定に登場人物。生みの苦しみはあれど、寝ても覚めても作品のことを考えている自分にふと思った。「物語を作るのが意外と好きだったんだなって」。世界を作り込んでいくと欠けていたピースがカチリとはまり、物語がひとりでに転がりだす。そんな感覚も新鮮で面白かった。
○…作品は「ごんぞう」と呼ばれる自主的窓際警官がある事件の真相に迫る物語。「元々警察ものに興味があったわけじゃないけど、調べたら”暗黙のルール”が色々あるのが面白くて」。舞台に設定したのは辻堂。自らが30年来暮らす街並みや人の距離感がほどよい土地柄も作品づくりのヒントになった。
○…娘が通う明治中学校では、おやじの会メンバーの一員。活動日には草むしりやプールの掃除をしたり。「冗談を言い合いながら楽しくやっています」。そんな掛け合いもどこか作品に生きているのかもしれない。実はすでに次回作に向けた構想もある。「次は毒をテーマに書いてみたい」。55歳の新人作家。創作意欲は尽きない。